#Episode02 ページ20
.
_______道枝くんと出会ったのは、まだ小学生だった頃。
私は、駅の近くにある学習塾に通っていた。
その日は確か雨上がりで、地面がまだ濡れていて、
「……………ん?」
水たまりを踏まないように下を向いて歩いていると、塾の前にハンカチが落ちていた。
「みち、えだ、……」
まだ小学3年生だった私は、ハンカチの隅に書いてある" 駿佑 "の文字が読めなくて、
「………の後、なんて書いてあるんだろう。」
多分、しばらくそのまま立ち尽くしていたんだと思う。
そんな時、
『______それ俺の。』
そこに現れたのが、まだ幼い道枝くんだった。
「あ、このハンカチね、ここで拾ったの」
『ありがとう………ここの塾のひと?』
「うん!Aって言うの!よろしくね」
『……よろしく。』
当時、人見知りだった道枝くんは、伏せ目がちで目をまともに合わせてくれなかったのを覚えている。
「あのさ、みちえだ…くん?下の名前なんて言うの?」
『あぁ、……俺の名前は、』
「!…………」
そう聞こうと思った瞬間に、私たちの前を
大型トラックが、水飛沫を上げて通り過ぎた。
「わぁ……。濡れちゃった…。」
お気に入りのワンピースが濡れてしまった私は、それをものすごく落ち込んで、
そんな私を見た道枝くんは、すかさずハンカチを手で払ってから差し出す。
『これで拭いて。……同じ塾ならさ、また返してくれたらええから』
その時に初めて、彼が私の方を真っ直ぐに見る。
その彼の綺麗な目に、当時の私の心は奪われた。
「え、でも……」
『じゃあな』
道枝くんだって濡れていたのに。
それにまだ、名前も聞いてないのに。
「待って…………っ」
彼はすぐに何処かに行ってしまった。
幼い頃の私には、そんな彼が王子様のように見えたのかもしれない。
_______それが私たちの出会いだった。
結局その後、塾で会うようになった私たちは次第に仲良くなり、何回か一緒に遊んだりもしたけれど、
なかなか好きだとは伝えられず、私が別の塾に通うことになったのをきっかけに、その後会うことはなくなった。
______そして現在、この公園で偶然再会を果たすことになるのだ。
383人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るる - ちょ!ニヤニヤが止まらないです!こんな作品求めてた!最高です! (5月27日 20時) (レス) @page27 id: 88a7fca5d2 (このIDを非表示/違反報告)
27(プロフ) - めがねさん» コメント有難うございます!短編集ではありますが、全体として一体感が出るように、話の繋ぎには工夫したので、気づいていただけてとても嬉しいです^^今後とも宜しくお願いします! (2022年8月15日 2時) (レス) id: 095c327c42 (このIDを非表示/違反報告)
めがね - 話の始まり方、1話1話の繋ぎにちょっとした遊びがあってとても面白いです。 (2022年8月15日 1時) (レス) @page6 id: d88aa2443e (このIDを非表示/違反報告)
檸檬の妹(プロフ) - 27さん» 返信ありがとうございます!絶対に見ます! (2022年8月9日 8時) (レス) id: 1fb600e1a2 (このIDを非表示/違反報告)
27(プロフ) - 檸檬の妹さん» コメントありがとうございます!読んでいただけるだけでも有り難いのに、感想を頂けてとても嬉しいです(;_;)更新したので、引き続き楽しんでいただければ幸いです! (2022年8月9日 5時) (レス) id: 095c327c42 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:27 | 作成日時:2022年8月6日 15時