【歌い手】最期まで歌いたい。

47話 2つの尊い命 ページ48

A「僕が雷を嫌いになったのは、小5の時なんです」

そらるさんが、灯油さんが、歌詞さんが、店長が、96ちゃんが、天月さんが、まふさんが僕を見る。

A「母さんと、買い物に行った時」


















































































A『母さん、今日のご飯ってカレーでしょ？』

『ふふっ。何で分かったの？』

A『だって。ジャガイモでしょ、人参でしょ、豚肉でしょ、それにカレールー買ってたから！』

『さすがAね！大正解よ』

A『やったぁ〜！今日のご飯カレーだっ！』


いつも母さんが買っていく物を見て、晩ご飯を当てるのが僕は好きだった。
その日は大雨だったが、いつもと同じように当てていた。


『あ、コラ。走って行っちゃダメでしょ！』

A『え〜、ケチっ！』

『もう、ケチじゃないでしょ。雨も降ってるんだよ？』


その時、母さんはもう一つの命を授かっていてた。だから、僕が離れたら母さんは追いつけなかった。


A『あ、母さん！信号青だよっ！』

『はいはい、ちょっと待ちなさい』


僕は母さんの待ちなさい、を聞かず、横断歩道を渡った。
それが、いけなかったんだ。


『A！危ないっ！』

A『え・・・・？』


後ろを振り向くと、母さんが顔面蒼白させて走ってきた。何事だって思って横を見たら、すごいスピードで車が突っ込んできていた。


『Aっ！！』

A『かあs、っ！』


母さんに思いっきり背中を押された。放心状態になっていると、音が聞こえた。










車のブレーキ音
人が潰れる断末魔
周りの人の悲鳴

そして、大きな雷の音














A『かあさ、ん？・・・・・ねぇ、ねぇっ！！』


ードカーンッ


A『うわぁぁぁあああああっ！！』









まだ小5の僕は、どうしたらいいか分からず、ただ泣くことしか、できなかった。


そしてこの日、尊い2つの命が奪われた。
大好きな母さんの命と、生まれてくるはずだった弟の命が。

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