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午後4時。夕暮れの見える海沿いの崖にて。
「・・・ええと、違う、違うんです!」
ようやく車から降ろされた目の前の少年は必死に言いつのっていた。そりゃそうだ、いきなりわけもわからないままに殺人事件の犯人に仕立てられ、そのまま警察(睦月たちが変装しているので勿論偽物なわけだが)にこんな人気のない崖まで連れてこられれば、自分でも狼狽するだろう。
いや、自分なら堪忍袋の緒が切れて今頃あたり一帯の人という人を爆発させているかもしれない。それを考えると、少年が狼狽えるだけですんでいるのは実はすごいことなのだろうか。
水平線の向こうに沈む太陽に、睦月はぼんやりとそんなことを思う。
「違う、聞いてください!俺はやってない、というかそもそも!」
「まあまあ落ち着いて」
露草がどうどうと落ち着かせに入る。
「あくまで君は容疑者の段階じゃないか。最重要、が頭につくとしてもね」
にこりと音のしそうな笑顔の場違いさに、少年_瀬川は本能的に説明は意味を成さないと悟った。自分が何をどれだけ言っても、その笑顔の前には無力だろう。様々な人と関わりを持ってきた瀬川だからこその判断だといえるが、それは決して彼にとって良い方向には転がらなかった。
冷静になれ。どちらにせよ、自分はなにもしていないのだ。ただ起こったことを話せば良いだけだ。瀬川は腹を決めた。
「どうだかな。犯人という人種はいつでも自分はやっていないと言う」
ライルは鎖の音とともに手錠をちらつかせ、わざとらしくにやりと笑ってみせる。沈みかけの太陽の光がきらりと安い映画のCGのように反射する。ノリノリかよ。睦月は小さくツッコむが、幸か不幸かそのつぶやきは茜色の潮風にかき消された。
「さて_堅苦しいのは嫌いだ。早速だが、事件発生当時、お前はどこで何をしていた?」
「・・・他の旅行者の人たちと話していましたけど」
「それを証明できるのは?」
身を乗り出して話すライル。ノリノリかよ(二回目)。睦月は横目で役に没頭する同僚を眺め、それから再び思考の海に潜ることを決めた。
因みに今回の作戦にあたり、睦月たちには偽名が与えられている。田中(露草)、鈴木(ライル)、佐藤(睦月)だ。出来るだけ母数が多く、記憶に残りにくい名前を宛がったらしい。無駄に派手だったり黒歴史臭のするコードネームよりは大分ましだ。
腕時計を見て、睦月はライルへ声をかける。
「鈴木、そろそろやめだ」
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ラハル - アノさん» ありがとうございます!他の作者様の素敵な文に負けがちですが精一杯やらせていただきますのでよろしくお願いします!! (2017年3月5日 22時) (レス) id: a67c8f74a0 (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - アノさん» お褒めに頂き光栄です(*´∀`) 更新遅れてますが頑張りますね(^o^ゞ (2017年2月24日 20時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
アノ - 凄く楽しく見せてもらっています!凄くこの作品好きなので更新頑張って下さい!応援しています! (2017年2月24日 20時) (レス) id: 09388b2c82 (このIDを非表示/違反報告)
ラ八ル(プロフ) - 花園イリアさん» ありがとうございます!とても嬉しいです!これからも頑張るので宜しくお願いします!! (2016年11月25日 22時) (レス) id: dcc66ec7ef (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 花園イリアさん» 有難う御座います! ご期待に添えるように頑張りますね(*´ω`*) (2016年11月22日 9時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
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