前世の記憶を持った異能探偵！

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「…まあいい」
不動は美影のルールを投げ捨てるような行為を若干見慣れてきた自分に成長と少しの悲しさを感じながら溜息をつく。俺は成長している。こいつと出会ったころと比べて、格段に大人になった。

うん、拳を収めるのに前ほどの労力を必要としなくなったし、そもそもこいつを更生させるのが無理だということも学んだ。俺は大人になっている。ちょっと頭は痛いが。

「それで、なにかわかったのか」
「うん、勿論。調査の成果が０だったなんて、探偵の看板を下ろさないといけないだろう？
まず、他殺だろうね。被害者のうなじには軽い火傷の痕があった。犯人はそれで被害者を気絶させたんだろうね。

つまり犯人は、彼の後ろに回り込めた人物＿＿被害者とそれなりに仲の良かった人物か、素早い人物に限定される。それに、わざわざ痕の残るものを使ったんだ。あまり頭が良いとはいえないだろう」

ふむ、と不動は顎を撫でた。
「素早い・・・つまり、お前のような、か」
「まさか！私ならもっと自然にやるさ」
「お前、しれっと・・・」
ふふん、と得意そうな顔をする美影に、うんざりした顔を見せる。残りの報告は部屋で聞くとしよう。ここでは好機の視線も痛くなってきたところだ。不動はさらに痛んできた頭を抱える。おもにこいつ(みかげ)のせいで。不動は帰ることを決意する。

しかし、それを阻んだのは再び中庭に響いた同じ女性の声だった。今度は驚愕ではなく怒気を含んでいるようだ。
「ふざけないで！！」
今度はなんだ。俺はもう帰るぞ。いや、帰らせろ。
鏡を見れば文字が浮き出ているのではないかというほど思い切り顔に出しながら、声の方向を見やる。と、人込みの中に大声で叫ぶ被害者の妻＿美桜といったか＿の姿を見つけた。
一体なんだというんだ。また殺人事件でもおこったのか。それだけはないことを祈りながら、不動は彼女の方へ歩を進める。

「まあまあ、あくまで仮定じゃあないですか」
もう一つ、人込みに見つけたのは山吹の着流し。温泉というこの場においてその恰好は異様なほどに周囲になじんでいる。10ｍほど先から見てとれるのは彼が美桜に怒鳴られている構図だが、しかし、見る限り彼はヒステリーを起こす美桜をなだめているようだ。一体彼女は何にそうも感情を昂ぶらせているのか＿＿＿

「それで？もしもできるとしたら、貴女は彼を生き返らせるんですかー？」
そりゃ怒るわふざけんな。
不動は壊れた社員を回収するべく全力で走り出した。

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