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廣瀬side
喉が掠れる。喉の奥に、血の味がする。呼吸さえまともにできているか怪しい。少しずつ視界に霞がかかり、意識が朦朧とする。
けれどまだだ。まだ足りない。頑丈な鉄の枷は変わらず彼を戒めた。
どうにもならない現状に、理不尽で不合理な現実に、廣瀬は更にその感情を爆発させる。
その体に収まりきらない心情のうねりが、心の破片が、煤けず炎のように燃えるそれが、その声と炎を誘い、さらに熱の円錐に確かなエネルギーをくわえる。その表面を、廣瀬の身体から発せられた、異能による物理的な炎が覆う。
視界の片隅に映る、何かのメーターのようなものに表示された数値がどんどん上がっていく。それはもう、視認できないほどの速度で。しかし、そんなことは廣瀬には関係ない。
壊せ、もっとだ。壊せ、燃やせ。全てひとしく灰に、無に帰すまで。
彼の激情を燃料とした炎が、その狂おしいほどの熱自身が、無機質に薄く光を反射する鉄の塊に吸収され、すべての人類が喉から手が出るほどに欲する万能のエネルギーと化ける。
それに従い、数値もさらにさらに高みへと昇る。無尽蔵とも思える、彼の熱をその数にかえて。
全身が熱い。肌が、心が、眼が、耳が、自分のすべてが焼けている。燃えない筈のそれが燃えて、焼けて溶けて、崩れる幻をみた。この全身を以て壊せないはずのなにかを壊そうと。抗えないはずの、なにかに抗おうと。
彼のすべてを焼いた業火は、高く高く天井を焦がした。
鉄というのは金属であり、熱伝導率がすこぶる高い。これは、廣瀬が少なくとも皮膚が燃える温度の熱を放出し続けるこの状況で何を意味するだろう。
答えは。
廣瀬がもう殆ど人間らしい意識を手放し、その破壊に対する脅迫観念だけで炎を発することしかできなくなったころ。
地下室に、異変を知らせる機械的なアラートが響いた。
『深刻なエラーが発生しました。深刻なエラーが発生しました。亜力制御システム本体の温度が異常に上昇しています。耐久可能温度を突破。システムを緊急停止します』
同時に、廣瀬を戒めていたその硬い枷が解かれる。受け止めるものもなく、彼はただ重力に従ってかたいコンクリートに、冷たく朽ちた彼女の隣に落ちる。
結局、最後まで枷を、世界を、壊すことはできなかった。
けれど、どうにもならないものに抗い、現状を、何もできない自分を、壊すことはできた。
だから今は一先ず、それでいい。炎の消えた廣瀬の顔は、どこか満足気な表情を浮かべていた。
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ラハル - アノさん» ありがとうございます！他の作者様の素敵な文に負けがちですが精一杯やらせていただきますのでよろしくお願いします！！ (2017年3月5日 22時) (
レス) id: a67c8f74a0 (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - アノさん» お褒めに頂き光栄です(*´∀｀) 更新遅れてますが頑張りますね(^o^ゞ (2017年2月24日 20時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
アノ - 凄く楽しく見せてもらっています！凄くこの作品好きなので更新頑張って下さい！応援しています！ (2017年2月24日 20時) (レス) id: 09388b2c82 (このIDを非表示/違反報告)
ラ八ル(プロフ) - 花園イリアさん» ありがとうございます！とても嬉しいです！これからも頑張るので宜しくお願いします！！ (2016年11月25日 22時) (レス) id: dcc66ec7ef (このIDを非表示/違反報告)
神羅(プロフ) - 花園イリアさん» 有難う御座います！ ご期待に添えるように頑張りますね(*´ω｀*) (2016年11月22日 9時) (レス) id: a22dd21ad8 (このIDを非表示/違反報告)
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