前世の記憶を持った異能探偵！

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廣瀬side


どうして。どうして、どうして、どうして、どうして。何故自分がこんな目に合わなければならないのか。何故こんなことが起きるのか。もう嫌だ、もうたくさんだ。


廣瀬は今までの人生の中でもそう何度も経験しなかったほどの感情の昂ぶりを覚えた。怒り、やるせなさ、憎しみ、悲しみ。様々な負の感情だ。

廣瀬は吼えた。
己が内に何時の間にか蓄積された憤怒を。悲哀を。憎悪を。理不尽を。身の内に持っていてはやがて身を焦がして燃えてしまいそうに危うく熱い、不本意ながら自分の異能に似たその全てを吐き出すように。

その対象は、
＿己の身に降りかかった理不尽な不幸だ。
＿たった今、自分の目の前で零れ落ちた命だ。
＿身体という器を割り、其れを零したあの男だ。

高まった感情は主である廣瀬の無意識下に、ともすれば光速かそれ以上の速度で錯綜し、絡まり、やがて主の思考に影響を及ぼすほどにくっきりと形を成し、連鎖する。
言うなれば交錯するそれは歯車だ。一つ一つでは何も成さぬ、只の一人の人間の脳内に分泌される電気パルスの起こす一時のまやかしにすぎない。
けれど、沢山の部品が集まり、組み合わさり、設計図のとおりに組み込まれれば。理性から生まれた其れは時に、人間の武器である理性を誑かし、融かし、沸騰させる麻薬ともなり得る。

＿其れを見ていながら、何もできなかった自分だ。
＿自分を縛り、何もさせなかったこの無機質な鉄の塊だ。
＿此れを、この状況を良しとし、存在を容認する世界だ。

そして。
歯車は組み合わさり、漸く一つの形を成そうとしていた。

＿だから、世界が、全てが憎い。

＿それなら、壊してしまえばいい。

＿自分に不運を押し付ける世界なんて、理不尽を強いる世界なんて、

＿必要ない。壊してしまえ。

未だすっきりと消えない怒りに吼える彼の思考が成した形は、宛ら彼の異能のように攻撃的で、刹那的で、破壊的で、けれど一度点いた火はもう消えない。


嫌だ、嫌だ、嫌だ。壊せ、壊せ、壊せ。


理性を壊すその声の導くまま、廣瀬は感情を放出する。

その勢いのままに、手を、足を解放しようと思い切り力を込める。が、硬いその枷は、人間では敵うことのない、圧倒的な硬さを以て彼のその思いを容易く打ち砕く。

廣瀬は吼える。もっと、もっと。もっとだ。
人間では敵わないなら、獣になればいい。粗暴に獰猛に、感情のまま、本能のままに。この枷を、壊せ。

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