＃294 ページ44
どうやらAは、周りの喧騒でオスマンと兄さんの声が届いていないらしい。アクセサリーを見ながら、ボーッとしている。
「小さい頃、らっだぁさんと約束しとったみたいやね。
成長したら海に一緒に行くって」
「…ええやん、夢あって」
「…あの人が優しい事も知っとる。
Aに歳の近い人が、あの人しかおらへんかった事も知っとる。
…やけど…俺らおるんやし、もう少し離れてもええやん…」
一人語りをするオスマンに、兄さんは少しだけ目を見開いた。
「(…誰かに執着するとか、俺ら今まであらへんかったし…。
オスマンは筆頭やと思ってたんやけどな)」
仄かに不機嫌さを漂わせているオスマンを見て、兄さんはそんな事を考える。
「(…どんどん堀深くなっていきそー…。
本人にその気がないなら、手助けを＿＿＿
…アカン…一瞬でも、独占欲出してまいそう…)」
「…Aちゃーんっ？」
「！あ、はいっ」
笑顔に戻ったオスマンが、優しく肩を叩いてAを呼ぶ。Aはハッとして、彼の方を向いた。
「折角なら、ネックレスとか見よっ！
タートルネックでもネックレスも着けれるやろっ？」
「で、出かける時なら…？」
「別に学校に着けて来てええねんで？
俺らも普通に着けてってるし」
「え…？こ、校則とか…」
「基本ゆるゆるやねん。
なー？兄さんっ？」
オスマンは笑顔のまま、兄さんに訊ねる。Aは戸惑いながら、不安そうに兄さんを見る。
「…まあ俺もストール巻いとるしな。
シャオロンとかもニット帽被っとるやろ？
邪魔にならへんのやったら大丈夫やで」
兄さんは考えていた事を一旦止めて、二人に向けてそう答える。
「ほ〜らっ！
やから着けてこっ？オシャレもええもんやで〜？」
「…ど、どれがいいのかとかは…」
「教えてあげるっ！うんっとな〜…」
オスマンが嬉しそうに話し始め、Aはそれを聞きながら、どれにしようかと悩み始める。
「(…今はまだ、考えへんくてええか。
平和な方なんやし)」
兄さんはそう結論づけて、二人の会話に入って行った。
＿＿＿帰る頃には、Aは数個のアクセサリーと数着の服を、嬉しそうに持って帰っていた。
「顔に出にくいけど、むっちゃ嬉しそうでニヤけたわ…」
「大先生デレデレやん」
「女たらしは何でも刺さるんか…」
「あの嬉しそうな様子見てニヤけへんとか強靭か？？」
「「「ぶっちゃけニヤケそうやった」」」
「そうなんやないかい！！」
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作者名：桜華 | 作成日時：2022年12月1日 13時
