＃270 ページ20
「･･･そ、そんな、
ぎこちなかったですかね･･･？
おかしいな･･･」
Aは首を傾げながら、ここ数日の事を思い出す。
確かに自分は何回か笑って見せた筈だが、その全てがぎこちなかったのだろうか？
自分としては、自然に笑えていた筈なのだが･･･
だが、笑った後に何人かが、微かに悲しそうな顔をしていた気が、しなくもない。そこ(相手の表情)に記憶能力を使っていなかったので、事実にするには証拠がない。
「･･･若干やで、若干」
「！ショッピさん」
Aが悩んでいると、ショッピが後ろから声をかけて来た。
「『楽しいんやけど、
自分はこんなに楽しんでええのかな』
って、悩んでる風に見えてたで俺は」
「･･･自然に、
笑ってたつもりでした･･･」
「まあ、ええんとちゃう？
自然に笑える位、
俺らに心許したって事やろ？」
「え、あ･･･
皆さんを、何も疑っては･･･」
「警戒してへんかったら、
流石に鈍感すぎるって
煙たがっとったわ。
警戒心がある方が、
逆に落ち着くわ」
「･･･そ、そうですか･･･？」
「ん」
Aが座っている椅子の背もたれに、ショッピは寄りかかりながら、短く返事をする。
「･･･可愛かったわ、笑顔」
「・・・！」
背もたれに寄りかかったまま、ショッピは首を傾けて、微笑んでそう言った。
柔らかく微笑む彼を見た事がなかったので、Aが今度は驚いた。
「･･･表情筋緩なったん？
なんか分かりやすいな、意外と」
「･･･え･･･そ、そんな事は･･･」
「むっちゃ驚いてるやん」
「そりゃ･･･そんな、
言われた事なかったので･･･」
「何が？『可愛い』って？」
「･･･ここ、数年は･･･」
「･･･んははっ。
顔若干赤なっとるのオモロ」
「･･･揶揄わないでください･･･」
ショッピがニヤニヤとして言うと、Aはふいっと顔を逸らした。
「(･･･ツンデレ気質あんのか？？)」
少しだけ耳も赤くなっているAを見て、ショッピはスンッと真顔になる。
「･･･A･･･」
「だーめっ」
「わっ！？」
ショッピが伸ばした手は、Aの髪すら触れる事なく、空を切った。
「･･･オスマンさん･･･」
Aを抱きしめて、彼から離させたのは＿＿＿ニッコリ笑っているオスマンだった。
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作者名：桜華 | 作成日時：2022年12月1日 13時
