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そういえば
一度だけAが泣いたことがあったな
と私は廊下をテクテク歩きながら考える
始めて治療を拒否された
あの時だ
でもそれ以降
泣いているところを見ていない
ウィルやカトリーヌ、カールには
心を開いているはずなのに
それでもあの日以降Aは泣こうとしないのだ
心が、、、壊れ始めている証拠ね
このままだときっと近いうち
Aはあの暗い場所から出なくなってしまう
それが期限のあることなら
私が代わりに表に出たってかまわない
でも、だから心が壊れてもいいってことには
ならないわけで
日は沈んでいても
まだ寝るには早い時間だったということもあって
廊下ではたくさんのファインダーとすれ違った
すれ違うだけなのに
睨まれるってひどくない？
私自身も極力怪しまれたくはないから
気づかないフリをしているけど
実際は睨み返してやりたい
私は影だから
Aみたいにいい子ちゃんにはなれない
喧嘩上等！とまではいかないにしても
理不尽には制裁を！くらいには思っている
影は悪い負の感情の塊みたいなものだから
この感覚だけはどうしようもなく強い
あてもなく歩いていると
食堂についてしまったみたいで
ここでご飯を食べてしまったら
Aが起きた時に違和感を覚えるから
私は中には入らず立ち去ろうとした
「あいつがエクソシストだとか
認められるわけねぇよな」
そんな声が食堂内から聞こえてきて
立ち去ろうとしたのに条件反射で
私は物陰に隠れた
どうやら食堂にはファインダーしかいないらしく
Aの悪口に花を咲かせているようだった
「ちょっと腕のいい医療班って扱いの方が
あいつにはお似合いだろう」
どうやらメインで話をしているのは
中央辺りのテーブルに座っている4人のファインダー
でもその内容に興味を持ってファインダーの輪は大きくなり
食堂のほぼ全員が話に参加し、言いたいように言っている
その中には、まだ一度も任務で一緒になったことがないファインダーも
少なからずいて
単にそういった悪い噂を面白半分で聞いて
便乗しているように思えた
「俺たちの大切な仲間を
あんな偽エクソシストに治療されてたまるか」
大切な仲間
それは教団に所属しているAも
例外ではないはずなのに
なんと都合のいいことだろう
「お前も大変だよな〜
あんな奴を守るせいでケガが絶えねぇわけだしよ」
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作者名：ゆーな | 作成日時：2020年8月4日 17時
