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表Aside
私が教団に入団したのは
12歳のことだった
私は教団から離れた街で
医者をしていた父と、看護師をしていた母の元に生まれて
大切に大切に育てられた
1階で小さな医院を開き、2階に家族で住んでいた私は
幼いころから、母に引っ付いて医院の手伝いをするようになって
常連の年配の人たちに
可愛がられていた記憶がある
8歳の時だった
母と一緒に買い物に出たときに露店で見つけた
赤いルビーのネックレス
私はまだ装飾品に興味を示す年ごろではなかったのだけど
母がそのネックレスを気に入り
値段も安かったということで即決で購入した
最初のうちは母が身に着けていた
大きな赤い宝石はそれはそれは目を奪われるもので
気にせず着けていた母も、流石に思うところがあったのか
仕事中はそのネックレスを私に預けるようになった
たぶん、誰かが持っていないと
盗まれそうで不安だったんだと思う
私はお手伝いはしても
直接患者に触れるようなことはなかったので
母は安心だったのだろう
10歳の時
小さな医院には珍しく
大ケガをした人が数人運び込まれてきた
話によると
この医院のすぐ近くで事故があったとのことだった
母「Aはガーゼ、包帯、消毒液を持ってきて」
一気に騒がしくなる院内で
私も無我夢中で駆け回った
大量の血と死にそうな人を見たのは
この時が初めてだった
父が傷口を見て指示を出し
母ができうる限りの治療をする
でも私には特別な資格などは何も持っていないから
医療に手を出すことはできず
苦しそうに呻いている患者さんの手を握って
声をかけることしかできなかった
『大丈夫、大丈夫ですよ、、、、』
どうにかしてあげたい
私にも手伝える程の知識や力があれば
手が回らないほかの重傷者の治療ができるのに
悔しい
悔しい
何もできない自分が惨めだった
祈るようにぎゅっと手を握ることしかできなくて
泣きそうになる
そんな時
服の下で何かが光ったような気がした
その光ったところにあるのは
母から預かっている、あの大きな赤い宝石
『何!?』
胸元でしか光っていなかったのに
あっという間にその赤い光は手を伝って
相手を包み込んだ
それはほんの数秒だったけれど
誰もがその光に目を奪われる
光が消えて、私も、周りの人たちも驚愕した
私が手を握っていた相手の痛々しい傷が
綺麗に治っていたのだ
.
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作者名:ゆーな | 作成日時:2020年8月4日 17時