毒に焦がれて ページ7
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――大丈夫です。
涙を零しながら、彼女は気丈な笑みを浮かべる。それを笑って受け止めることができるほど、俺は出来た人間じゃなかった。
「大丈夫じゃ……ないでしょ」
アネモネが、散る。
彼女の吐き出した花が、地面に散って形を崩した。色とりどりの花は、毒々しく俺の視界に踏み込む。息が苦しい。自分の首が絞まっていくような気がして、ただ怖かった。怖いのは、苦しいのは、彼女のはずなのに。
「何、それ。病気?」
「……そう、ですね」
赤と、白と、紫。Aちゃんは足下の花を躊躇なく踏み潰す。ひしゃげて色を濃くするアネモネに、彼女はまた涙を零した。
「花吐き病、っていうんです」
「花……、」
「片想いを拗らせると、花を吐くようになる」
そう呟いた彼女は、どこかでその事実を諦めたように。眉を下げて、ただ笑っていた。
足下の花は、ひとつ、ふたつ、と崩れてゆく。――それじゃあ、Aちゃんは。
「誰に?」
「――同じクラスの、人です」
片想い。
好きな人が、いるのか。
彼女と同じクラス、つまり俺より年下の。俺ではない、恋慕の情を抱く相手。
ああ、
花を吐くべきは、彼女だけじゃないんだろう。俺だって、きっと本当なら花を吐いていた。君を拗らせて、アネモネの海に溺れてしまっていたのかもしれない。
ううん。いっそのこと、溺れてしまえばよかった。君と2人で、この毒の狭間に。
でもそれは、叶わないんだよね。彼女がその人を想い続ける限り、俺はアネモネを踏み潰す彼女を傍観することしかできない。苦しいけど、寂しいけど、好きだけど、それは仕方のないことなのだろう。
だから、ねぇAちゃん。
アネモネを、「儚い恋」を、どうか。
終わらせて、はやく笑って。
誰かの隣で。願わくは、俺の隣で。
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作者名:合作 x他5人 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年12月18日 22時