愛は致死傷 ページ11
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＿＿＿＿指先を伝って、君に私の想いが届くなんて。
そんなわけがないとわかっていた。頭では理解していたつもりだった。
けれど私は、どんなことをしたとしても＿＿例えそれが残酷な選択だとしても、心の内にある「愛」と呼べる感情を彼に受け止めてほしかったのだ。
「Aちゃん」
「……っ、」
そんな優しい声で私の名前を呼ばないで。
そう心が悲鳴を上げる。
ぐ、と彼の首に掛けた手の力が強まった。カタカタと震える指先に力を入れて、白くなめらかなその首に爪を立てる。皮膚に食い込む尖った爪の痛さに彼は顔を歪めるが、私の行為を止めようとは一切しなかった。まっすぐに私の瞳を見つめているだけだ。
どうして、拒んでくれない。
君が「やめて」と叫んで私を拒絶してくれたなら、私の心はバラバラに砕け散って、もう君に関わることはないというのに。
それをわかっている上で何も言わない彼は、どこまでも卑怯な男だ。ずるい、その言葉を声にしない代わりに、ギシリと奥歯を噛み締めた。
「どうして、どうして振りほどかないの……っ」
「これがきみの愛の形だというのなら、ぼくは拒まないね」
愛を与えてくれるなら、誰でもいいの？
そんな言葉が頭の中をぐるぐると逡巡するが、それを彼に浴びせることはできなかった。
「私だけを好きになって、って言ったら……？」
無意識のうちに、更に腕に力が加わる。
う、と小さな呻きに似た声を漏らしながらも、彼は少しの沈黙を置いて「それは謝るしかできないね」と、うわ言のように呟いた。
弱々しい笑み、申し訳なさそうな色を映す瞳。すべてが私の心を揺らす。どうすればいいのかがわからないままだ。
ひゅ、ひゅ、と彼の喉を空気が通る音が聞こえる。
それと同時に、私の喉から込み上げてくる嘔吐感。
この感覚には、どうしたって慣れない。
「……う、ぇ、……っ」
意に反して私の口から溢れてくる花びらを、慌てて手に掬って彼から離れる。
この花に触れたら、彼まで花吐き病に感染してしまう。それだけは避けたかった。
純粋に愛を求めている無垢な彼に、こんな残酷な痛みを苦しんでもらいたくはない。
けほ、と小さく咳き込んだ彼の瞳が私を映す。
「……Aちゃん」
「見な、いで……」
花は綺麗でも、花を吐き出すだなんて醜い。
そう思っても、止めたくても、喉を通って込み上げてくる花はとどまることを知らないのだ。
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作者名：合作 x他5人 | 作者ホームページ：
作成日時：2017年12月18日 22時
