夢小説の悪役。 (ページ2)

今日:1 hit、昨日:0 hit、合計:270 hit

思い出のプロローグページ2

ある日突然自分の正体に気付いてしまったのだ。

「豚美～、起きなさい！」

お母さんの呼ぶ声が下の階から聞こえてくる。
私は己の存在を理解し、戸惑っているというのに。時間はいつものように平和に流れていく。

……私は夢野豚美。一ヶ月後には高校生デビューの女の子だ。
でもそれはこの世界の『設定』であり、本当の私はこの世界の住人ではないのだ。

ここは…夢小説の中…？

夢野豚美は私がいつも寝る前に見ている『魔法学園』の夢小説の悪役の名前で、鏡を見れば、文章で表現されていた通りの容姿だった。

『醜い豚のように太っていて、常にツインテール。ブサイクな顔をしていて、それを隠すように厚化粧とキツい香水を付けている。』

…高校前でよかった。
来月にはその姿で学校に行った事になる。
そのまま進んでしまえば、問題を起こし、夢主を虐めて、イケメンに叩かれて最終的に退学処分だ。

……そもそも名前がもうダメね、このままでは悪役まっしぐら。退学処分落ちにはなりたくないわ。

私は起き上がり、今からやることを考える。

まず、体型や身だしなみを改めなくてはならないわね。
クリームパンのように丸々とした手を見てため息をつく。

…これでは入学までに間にあわない。
夢主が来るのは入学式から数ヶ月後…その前に既にイケメンが揃っているわけだもの。
少しでも、せめて人並みになるようにいまからダイエットしなくちゃいけないわね。

そして、名前……親はどういう気持ちで名前を付けたのかは知らないけれど、名前を変えたいわね。何かしらの手続きも必要だから、親に相談しなくちゃいけないわ。
どちみち私は今高校生にもなっていないもの。

頭を悩ませながら私は階段を降りる。
説得には時間がかかりそうね。同時進行にダイエットもしなくちゃいけないわ。

…真白……私は貴女やイケメンにボコボコにされる未来を変えるわ。

貴女の魔力が強くても、誰にでも愛される美人でも。

絶対に、平穏な学校生活を送らせてもらうわ……！！