第四十三話 守りたいもの ページ46
愁side
４年前。花梨さんが亡くなって3カ月が経ったある日。
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愁父「愁。大事な話があるから、座りなさい」
愁「…はい」
愁父「急だが…高槻さんとの間で、お前とAちゃんの婚約を結ぼうと言う話が出ている。…いや、ほぼ決定している。」
＿＿＿＿婚約！？
Aちゃんと・・・？
愁父「詳しいことは、改めて両家揃った時にしようと思っている。が、その前に伝えておかなければならないことがある」
その時、花梨さんの死の背景を聞かされた。
花梨さんは、交際していた先輩に性的暴力を受けたのだそうだ。
死亡確認後に妊娠が発覚したというのだから酷い話だ。同じ人間かと疑う行いだ。
愁父「そこで、高槻さんは次女のAちゃんには信頼できる人との交際・結婚を望み、幼馴染で藤原家の長男である愁に声がかかった。というわけだ」
愁「・・・お父様」
愁父「何だ？」
愁「Aを守りたいです」
愁父「…そうか」
愁「具体的にはどのようにAと接すれば良いのでしょうか？婚約、というのはこれまでとどう変わるのでしょうか？」
愁父「…愁は、Aちゃんをどう思う？本当は、愁もAちゃんも親のエゴで縛り着けたくはないんだ。だから、愁の気持ちを聞いておきたくてな」
愁「・・・恋愛感情があるかどうかは、自分でもわかりません。しかし明確なのは、Aを何かから守りたいという思いはあることです。何からかはわかりませんが…」
愁父「ならば、愁の思うように接すれば良い」
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愁「…」
沙絵「愁兄さま、どうかした？」
愁「…いや、何でもない」
沙絵「…もしかして、A姉さまの事を考えてらしたの？」
愁「…！」
沙絵「もしかして図星？」
4年かかっても、Aを何から守りたいのかわからなかった。
でも、この4年でわかったことがある。両家の両親、特にあの時父が言っていた“親のエゴ”の正体だ。
幸せになってほしい人がいて、その人を外的要因で傷つかないようにするために、危険なものを排除する。
Aには申し訳ないが、何としてもAを守るために、俺はこの婚約を利用する。
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作者名：ｉ | 作成日時：2023年3月21日 22時
