不釣愛 [藤原愁] (ページ35)

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第三十二話　県大会予選(二日目)　団体戦ページ35

(愁「…深呼吸をして、弓と矢に自分の全神経を集める。そして的と向き合い、矢を放つ」)

愁の声とあの紫色の瞳が脳内を埋め尽くす。
これから試合だというのに心臓の鼓動も早いままで落ち着かない…

神薙「高槻さん、熱でもあるの？」

剣城「まさか、貴公子に告られでもした？」

(はい！？///)

神薙「ちょっと紗希！試合前に冷やかさないの！」

『えっと…』

剣城「だって二人で帰ってきてからずっと顔真っ赤なんだもん」

『やっぱりそうですよね…』

神薙「何かあったの？」

『元はと言えば私の不注意の問題で・・・』

私はさっきあったことを先輩に話した。

剣城「成程ね～…にしても高槻さん、可愛すぎ！」

『・・・え？』

剣城「だって、身長低いの気にして裾踏まないようにしてたなんて～まぁ、受け止めた相手があの貴公子じゃ、いくら幼馴染でもキュンってするよね～」

神薙「…試合は大丈夫？」

『もちろんです！弓道に私情は持ち込みません』

(抑も始めたきっかけが私情でしかないのは目を瞑ってください…)

神薙「そう。話してくれてありがとう。原因が体調不良じゃないとわかって安心したわ」

剣城「そろそろ2年呼んでこないとね。あの四季ちゃんたち、仲が良いのは結構だけど、周りのことも見てもらわないと…」

2年の選抜メンバーは春夏秋冬の四季の漢字が苗字にある為、4人合わせて“四季”と呼ばれている。かなりそのまんまの名前だが、名付け親は神薙先輩だと聞きあっさり納得した。

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静弥「・・・A、大丈夫かな」

湊「心配だよな。熱でもあるのかな？」

静弥(そうじゃないんだけど・・・)

七緒「そういや昨日、控室であの子が転んじゃって、そん時貴公子が抱き留めてたんだよ。いや～流石、やることもイケメンすぎっしょ！」

静弥「え、A転んだの？！」

小野木「裾踏んだのがどうのって…ただ転んだだけでそんな大袈裟な…」

静弥「…Aは低身長なの気にしてるのに、転んだらよく揶揄われていたんだ」

七緒「そ、そうだったんだ…」

静弥「多分、その所為もあってだいぶメンタルやられているんだろう」

二回戦の結果、春永先輩が三中、他が皆中で私が二中。計二十射十七中で予選突破を果たした。また、男子が一位通過。風舞もギリギリ予選を突破したようだ。