【弱虫ペダル】空ノ向コウ【東日本大震災】

遥か遠い道の先のあなた(東堂ルート) -1 ページ7

『山岳賞は…チーム 花見工業の東堂尽八選手！！』

ＴＶのロードレースチャンネルにそんな声が入ると、私は夕食を作る手を止めてＴＶ画面を見つめる。

そこには表彰台の上で記念の花束を受け取り、掲げて見せる東堂さんの姿があった。

海｢…おめでとう、東堂さん。｣

私は思わずこの場にいない東堂さんに言ってしまう。

夢中で自転車をやっていたら、私はいつの間にか大学生になっていた。

大学は自転車競技が強い静岡の洋南大学だ。

私は大学でも変わらず自転車をやっている。

大学に入ってから始めた一人暮らしのアパートには、自転車に関するものばかりが目立っていた。

周りにはきっと自転車一筋の不思議な女の子に見えているだろう。

確かに私は自転車が好きだ。

空がくれた、私の希望だから。

でも、今はもう一つ理由がある。

『東堂選手、今回のレースで山岳賞を獲得したお気持ちは？』

東堂『そうですね―…』

インタビューに楽しげに答え始めた東堂さん。

とてもかっこいいから、憧れる女の子はたくさんいるだろう。

その女の子たちは、私が実は東堂さんと一緒に何度もヒルクライムをしたことがあると知ったらどう思うだろうか。

何回も言葉を交わし、ましてや恋心を抱いていると知ったら。

この恋心を知っているのは相談に乗ってくれた巻島さんだけだ。

遥か遠い道の上を走る東堂さんを追いかける私をたった1人応援してくれる。

そういうのは疎いけどなァ、と言うけど応援してくれるのは嬉しい。

巻島さんは、東堂さんのことを、一人の選手としても、好きな異性としても、追いかけ続ける私を否定したりしない。

東堂『…とにかく、真っ先に見て欲しかった2人がいます。』

『その2人とは？』

東堂『かつてのライバルと…もう一人は秘密です。』

ライバルっていうのは巻島さんだろう。

なら、もう一人は誰？

気になったけど、インタビューはそこで終わってしまった。

そして番組はＣＭに入ってしまう。

翼｢ふうっ…｣

私は一つため息を吐くと、用意が終わった夕食を小さなローテーブルに置いた。




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すみません切ります！

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