【弱虫ペダル】空ノ向コウ【東日本大震災】

遥か遠い道の先のあなた -2 ページ8

翼｢いただきます。｣

一人暮らしでも律儀に手を合わせてから食べ始める。

寿司職人である伯父に礼儀を叩き込まれたからだ。

私の挨拶は、ＴＶの音だけが響く部屋には少し虚しかった。

(あのレポートの〆切は…来週か。)

そんなことを考えながら夕食を食べる。

まぁ、夕食と言っても練習で遅くなったから簡単なものだけど。

今日はパックご飯と味噌汁、それから野菜炒めとスーパーのお惣菜だ。

野菜炒めはさっき手を止めたせいで少し焦げている。

誰かに食べさせるわけでもないから、別にいいのだけど。

ＴＶを眺めながら、黙って食事を口に運ぶ。

と、

〜♪ 〜♪

携帯電話に誰かから電話がかかってきた。

｢ｺﾞｸｯ……もしもし。｣

少し慌てて口の中のものを飲み込み、電話に出る。

『もしもーし！海！元気にしているか？俺の活躍は見たか？』

｢とっ、東堂さん！？｣

電話をかけてきたのはまさに私が今考えていた東堂さんだった。

『何をそんなに驚いているんだ？よく電話はする仲ではないか。』

｢確かにそうですけど…。レースは？｣

『レースも何もあれは録画で生中継じゃないだろう。』

｢あ、あぁ、なるほど…。｣

まだ私の心臓はバクバクしている。

｢それで、何の用ですか？｣

『特に用はないな！』

｢…結局ないんですか！｣

電話越しに盛大なツッコミを入れる。

『いやー…全くねぇって訳じゃねーけどな。』

｢どっちなんですか…。｣

『ただ声が聴きたくなった、と言ったら笑うか？』

一転して、真剣な口調で囁かれた一言に心臓が跳ね上がった。

｢わ、笑いはしませんけど…。｣

『そうか！なら、少し話してもいいか？』

｢…はい。いいですよ。｣

私は嬉しさが声に出ないように応える。

｢ただし、夕飯の途中だったのでそこら辺の責任はとってくださーい。｣

『おお、それは悪かったな！では、さっき放送されていた試合の話でもするか？』

ロードレーサーの血が騒いだ私はその話に食いつく。

｢是非！山岳賞取った時の詳しい話を聞かせてください！｣









-------切り取り--------

東堂さんマジハイスペック

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