【弱虫ペダル】空ノ向コウ【東日本大震災】

My Diary -4 ページ6

しばらくして陽が傾きかける頃、双子が帰ってきた。

空は勝ち誇ったような顔で、海は頬に涙の痕が残っていた。

数日間に渡る大喧嘩にやっと決着がついたようだ。

海を慰めながら話を聞くと、自転車で追い回されたと言う。

勇太｢道具はなしだって約束だろうが！！！｣

俺が空に雷を落としたのは言うまでもない。

そして、どちらが歳上かという喧嘩はもちろんしばらく持ち越しになった。







海｢あったねぇ、そんな喧嘩。｣

今はもう中学校2年となった海と歩きながら話す。

海｢思ったけど、あの時の怒った勇太おじちゃんさ、あの常連の忠お爺ちゃんが私たちを怒った時と同じ顔だったよ。｣

勇太｢うわーもしかして似てきてたのかな。爺さんと同じ顔ってなんかあれだな。｣

俺は花束を抱え直しながら返事をする。

そして、

勇太｢来たぜ、空、爺さん。｣

そっとそこにしゃがみこんで、花束を置いた。

海を臨む、高台の公園にある慰霊碑。

今日で震災から三年が経った。

あの日、空、そして爺さんは津波に飲まれ、命を落とした。

爺さんはまだ遺骨すらほとんど見つかっていない。

海｢空、忠お爺ちゃん、見て見て！私ね、この間ロードレースの大会で優勝したの！しかもほら、山岳賞も取ったよ！｣

海が誇らしげに慰霊碑の方に見せるようにカラーゼッケンを突き出す。

勇太｢今だったら空も抜かせるかもな？｣

海｢抜かせちゃうよ？余裕でねっ｣

海が向日葵のように笑う。

海の笑顔が向日葵のようだと言い出したのは、確か空だったな。

今、俺にできること。

それは、この笑顔を守ることと震災を忘れないことだろう。

(改めて、約束するよ。空、爺さん。)

ふんわりとした潮風に乗って、二人分の｢ありがとう。｣という声が聞こえた気がした。



End.







--切り取り--

オチが行方不明 _(:3」∠)_

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