第72話 ページ22
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桃城と遠山の声を受けて、その場にいた選手達がAと越前に注目する。そんな間にも2人のもとに駆けつけてきていた遠山が「ずるいわ〜!!」と叫んだ。
「何で今日はこんな人多いわけ?」
「ん?さぁ〜、ワイもよー知らんねん。ただみんなテニスするって言うて出て行ったからついてきたんや!」
どこまでも遠山らしい回答に思わず苦笑いをこぼす。見る限り、そこにいるのは遠山、桃城を初め海堂に切原、日吉、白石、不二兄弟に他数名といった様々な面々。各々コートに入ってテニスをしている真っ最中だったようだ。
コートの様子を把握していたAに視線を向け、「せや!」と切り出した遠山が元気いっぱいに言う。
「ワイ、ずっと姉ちゃんとテニスしてみたかったんや!!なあ、今から試合しよーやぁ!!」
「何言ってんの、俺が誘ったんだけど。」
「なんやと、今日はワイがやるんや!」
目の前で繰り広げられる争いにさながら少女マンガの主人公になったようだ。いや、正確に言えば彼らがもっと背が高く大人っぽい人物だったらそんな気分になれたかも知れない、というところだろうか。今は小さい弟を持つ姉の気分である。
どちらもひく気はないらしく、いい合いを繰り広げている。止めようにも会話に入る隙を与えられず戸惑っていると、「金ちゃん!」と駆け寄ってくる者がいた。
「なんや白石、ワイ姉ちゃんとテニスするんや!」
「だから俺だってば。」
「……なるほど、大体分かったで。」
やってきたのは腕に巻いた包帯と基本に忠実な聖書テニスが特徴の白石だった。この一瞬で状況を理解したという彼はAに笑顔を向けた後、遠山に向き直る。
「金ちゃん、Aさんは越前くんと先約束しとったんやろ?わがままいうたらあかん。代わりに俺が相手したる。」
「嫌や嫌や、ワイ姉ちゃんとやってみたいわ〜!」
まるで母親のようになだめた白石だったが、それでも駄々をこねる遠山。そんな彼を「金ちゃん。」と少し低い声で呼ぶと、腕の包帯を少しずつ取り始めた。
その動作をみて、遠山は固まったかと思うと「毒手は勘弁やで〜!!」と叫びながらコートへ戻っていった。謎の一連の流れに固まるAと、慣れた様子で「助かったっス。」と返す越前。
「うちのごんたくれがホンマ迷惑かけてもて、すまんな。」
「あ、いや、大丈夫……。それより毒手って一体……?」
不思議そうなAの問いかけに、白石は「あぁ。」と笑った。
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2019年1月10日 0時