無印・世界編 心のその3 ページ18
円堂守の祖父、円堂大介さんが残したという最後のノート。そこに書かれていたのは11ヶ条もの心構え。
まるでチームの一人一人に送られるような言葉の数々に、選手もマネージャーも、それぞれが感銘を受けた言葉を心の中で反芻していた。
……御剣が目に停めたのは、心のその3だった。
大切なものを守りたいと思う"ソコナシノヤサシサ"。
"守る"だなんて烏滸がましいことは出来ない、ましてや"優しさ"だなんて自分とは最も無縁である言葉だというのに、何故だかその言葉がやけに頭に残った。
物、モノ、者、御剣が大切に思うものは、彼女自身が思うよりもずっと沢山あった。
例えばサッカー、例えば繰り返される平穏な日常、例えば……想い焦がれるたった一人。
・
FFI決勝が間近であるとはいえ、私は自身が選手として出場するわけでもないのに夜闇の中、一人ボールと触れ合っていた。
選手達の興奮と闘争心に充てられたのか、その
……熱を抑えきれないなんて、私も随分アイツらに充てられたな…ぜんっぜん冷めないし…眠気も来ないし……こりゃ明日は寝不足かな。
息をひとつ零す。
ふと、昼間に見せてもらった大介さんのノートの内容を思い出した。
その中でとりわけ頭によく残っていたのは、心のその3であった。
私には縁のないものばかりの言葉……否、違う。
あれは、私が"そう在りたい"と望んだ言葉だ。
大切なものを守りたいと思う、ソコナシノヤサシサ。それは、望みから徐々に形を変え、別のものへと変化していった。
私には些か鮮明すぎるほどの蒼。
自分だって大した頑丈な心持ちなんかじゃないくせに人の事ばっかり気にかけて、背負わなくていい分まで誰にも見えないようなところで一人背負い込んで、自分の心の限界なんて弁えないような、そんなお人好しが過ぎる馬鹿。
そんな馬鹿を私は、何にも替え難い
……エイリア学園の一件でアイツがチームを去った時、はじめて欠けることに恐怖を覚えた。
強がって円堂よりも早く立ち直ったふりをしていたけれど、あの時ほど苦しいと思ったことは無い。
私にとってのたった一人。
底の見えない、人を守り支えるような優しさに、私は幾度となく救われた。
それは、憧憬にも似た想い。
「……あ…」
つい足に力を入れてしまう。
ボールが木に当たり、その反動であらぬ方向へと飛んでいってしまった。
・→←(今更)GO・クロストにおける御剣さんの存在消去について
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弓女雅零(プロフ) - こっちにも来ちゃいました(笑)やっぱりこの小説好きですっ!! (2019年2月25日 17時) (レス) id: fc748f73ac (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - リアトさん» リアトさん、はじめまして!コメントありがとうごさいます!ご指摘ありがとうございます!確認次第訂正いたします! (2019年2月15日 20時) (レス) id: a67af18030 (このIDを非表示/違反報告)
リアト(プロフ) - こんばんは。いつも展開をドキドキしながら読ませて頂いてます。ところで誤字報告を少し。>「確かに何人か俺にチョコらしきものを私に来た女子がいた。」これは「渡し」ではないかと思いまして報告させて頂きました。次話、お待ちしております。 (2019年2月15日 20時) (レス) id: 809030045e (このIDを非表示/違反報告)
七瀬真昼 - 分かりました!!というか返信してくれてありがとうございます!毎回毎回ご丁寧に…。私だったら返信しないまま放置ですよ多分。そういえばふと思ったんですが、次のイナオリで子文くんの正体が明らかになりますよね!見当ついてるけど…ゆきさんは分かりますよね! (2019年1月27日 17時) (レス) id: 60ce0b2030 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 七瀬真昼さん» 七瀬さんコメントありがとうございます!リクエスト、大変ありがたいお話なのですが、私事で大変申し訳ないのですが、モチベの関係で受け付けてないんですよ…本当にごめんなさい…でもバレンタインのお話は元々書く予定でしたので、そちらの方を是非見て頂ければ… (2019年1月27日 17時) (レス) id: a67af18030 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2018年12月17日 23時