86 「あはは、そうみたいですね。けどそれがどうかしましたか?」 ページ10
「土井さん、おはようございます」
「…おはよう、Aくん」
朝、Aがそろそろ起きている頃かと土井先生はAの部屋を訪れた。
昨日の夜、煙を吸って眠ってしまっているAの身体は大丈夫だろうか。
五年生や伊作は多少なりとも耐性があるだろうが、Aは違うだろう。
そんなことを考えながら障子を開けてみれば、Aは既に着替えて布団を押し入れに仕舞おうとしていた所だった。
「……Aくん、体調は悪くない?」
「はい。特に問題ないです」
「そうか。昨日催眠効果のある煙を吸って倒れさせてしまったから少し心配で」
そうですか、と返しながらAは畳んだ布団を入れた押し入れの戸を閉めた。
「……」
土井先生の方を見ると、障子を開けたところで動きが止まったままAを見つめている。
「…どうしました?」
「Aくん、……妖術解けてないんだね?」
Aの人格が変わってしまうのはあくまで忍たまを前にした時。
それ以外の人たちへの接し方は妖術にかかっていてもいなくても特に変わりは無い…はずなのだが。
(それでも何かが違う……丁寧さが抜けきらない所作か?それともこちらを見てるようで見ていない目……?)
Aはなんでもないように、
「あはは、そうみたいですね。けどそれがどうかしましたか?」
笑って首を傾げてみせた。
「いや、……今までは眠ったら妖術が解けていたから、今回は違うんだな、と思って」
「ああ言われてみれば確かに。妖術が解けるタイミングは定まっていないみたいですね」
妖術にかかっている今、妖術にかかっているこの状況については特に何とも思っていないようだ。
「そうだ、土井さんにお願いがあるんです」
「え?」
「いつまた妖術が解けるかわかりません。なので…」
「…なので?」
Aは一歩、土井先生に近づく。
「私を土井さんが授業をする一年は組に連れていってください」
「……ええ?!ど、どういうつもりで…」
「忍たまの皆さんのことをもっと知りたくて。勝手に外を出歩くより、土井さんの傍について学園を周った方がいろいろ都合が良いかなって」
「…困ったなあ…」
「この通り、天女からのお願いです」
90度のお辞儀を綺麗に決め、「ああもう……」土井先生は参って、額を抑えた。
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←85「助かりました」
85人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
加糖雪(プロフ) - まんじゅうDXさん» こちらにもコメントありがとうございます…!ようやく五年生と絡ませることができました…!こちらこそここまで読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2022年11月28日 17時) (レス) @page7 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうDX - 続編 おめでとうございます!! 5年生との絡み…最高ですねッ!! ここまで続けてくれて、本当にありがとうございます…! (2022年11月26日 18時) (レス) id: 8f3d0eca03 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:加糖 雪 | 作成日時:2022年11月25日 19時