85「助かりました」 ページ9
ばたりばたりと、為す術なく五年生達が倒れる。
その音が障子の向こうで聞こえたのを確認して、それからやっと六年生はふう、と息をついた。
文次郎が
「土井先生、助かりました」
「ああ。こちらこそ六年生が気づいてくれて良かったよ」
部屋に催眠薬の入った煙玉を投げ込んだのは彼であった。
五年生がいない、不審な動きがあった、といち早く気がついた六年生たちは、すぐに手分けをした。
仙蔵と伊作はAのいる部屋へ直行。
留三郎と長次は他に異常がないか、他の後輩たちは揃っているのか手短に確認した後部屋へ。
小平太は職員室__もとい山田先生と土井先生の部屋に報告。
部屋に飛び込んできた小平太からの話を受け、土井先生はこちらに向かい、山田先生は長屋の安全確認に回ったということだ。
土井先生ははあ、とため息をつく。
いつもの黒い忍び装束は暗闇に溶け出しているかのようである。
「…あんまり、生徒相手にこういうものを使いたくないんだけどな」
言いながらも手際よく対処できているのは、教師だからか、火薬委員会の顧問だからか、はたまたこういったことには少なからず慣れているからなのか。
「そうだ、Aくんは.......」
土井先生が視線をさ迷わせるが、見当たらない。
「.......Aくん?」
Aを探してきょろきょろしていたが、留三郎がハッとした。
「い、伊作もいないぞ?!」
「まさか.......!」
仙蔵がもう一度勢いよく障子を開けてみれば、部屋の中で眠って倒れているのは五年生.......
.......と、すぐ足元、障子の傍でAと伊作も絡み合って倒れている。
「伊作!A!」
小平太が名前を呼ぶが、ぴくりとも動かない。
はあ〜〜〜〜。
最早その場の全員がため息をついた。
伊作の不運で、Aを連れて部屋を出ることができなかったのだろうというのは簡単に想像できる。
それでもAは伊作を庇おうとしたのか、腕を伊作に回していた。その寝間着の袖は伊作の口元に当てがわれたままになっている。
86 「あはは、そうみたいですね。けどそれがどうかしましたか?」→←84 「いえいえそんなことは」
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加糖雪(プロフ) - まんじゅうDXさん» こちらにもコメントありがとうございます…!ようやく五年生と絡ませることができました…!こちらこそここまで読んでいただけて嬉しいです。ありがとうございます! (2022年11月28日 17時) (レス) @page7 id: 7edce3b0d6 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうDX - 続編 おめでとうございます!! 5年生との絡み…最高ですねッ!! ここまで続けてくれて、本当にありがとうございます…! (2022年11月26日 18時) (レス) id: 8f3d0eca03 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2022年11月25日 19時