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私は誰かに抱きとめられたみたいだった。

私の肩と背にその「誰か」の腕が回っていて、身体がしっかり支えられている。


「っ、す、すみません…」


私はすっかり抜けていた力を振り絞って、その人に預けっぱなしになっていた体重を自分の脚で支えた。



まだ目眩がするような感覚がして、私は額をおさえる。


「体調が優れませんか?」

「ああ、いえ、少し立ちくらみがしただけです」


体調が悪いなんてとてもじゃないけど言えない。

というかそもそも、今まで具合が悪いとは感じていなかった。
我慢していたとかでは決してなく、突然の不調に私自身が1番困惑している。




「…そうですか」
「はい。助けてくださりありがとうございました」

額に手を当てるのを一旦やめて、私は顔をあげてその人の方を見た。



目の前にいたのは私よりは歳上に見える青年。
茶髪の髪の毛をひとつに結い上げている。

忍術学園の制服でも、先生たちの着ている黒い忍び装束でもない私服を着ていて、その肩には荷物の入っているであろう風呂敷がかけられている。




私はまだふらつく身体が倒れないように気をつけながらその人に頭を下げて、足早に2歩戻って自分の部屋に逃げ込んだ。


ぴしゃりと障子を閉めて、畳まれた布団の上に上半身だけ乗せて横になる。




「…はあ、…はあ……」




私はゆっくり息を整えていく。


自分の身体の事は自分がよくわかる、なんて言うけどそんなことない。




今の私には自分の身体の事がわからない。

何も感じないのだ。


痛みも、吐き気も、だるさも。



だから、倒れかけるまで何も気が付かなかった。



(いつから…?どうして…)



自分が思っているよりずっと、この身体はすっかり弱りきっている。

今のでそれを身をもって理解した。


(とにかく、ここを出るまで耐えて…お願い、私の身体…)



自分に言い聞かせるようにして、私は目を閉じた。

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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時

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