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「あら。着替えて手紙を書いていたのね」
「はい。昨日は一日寝ていたからか早くに目が覚めてしまって」
山本さんはこちらへと歩み寄ってくる。
「これ書き終わったので、山本さんに預けて良いですか」
私は書き終わった手紙の墨が乾いたのを確認すると、紙を折りたたんだ。
「ええ」
そして、文と場所を書いた紙を2枚とも手渡す。
どちらも中身は嘘。どうにかうまくいきますように。
山本さんの綺麗な指先が手紙を掴んだ。
「しっかり受け取ったわ。学園先生に渡しておくわね」
山本さんはそれを懐へとしまい込む。
「よろしくお願いします」
「体調の方はどうかしら」
「お陰様で、元気です」
「良かったわ。
あとで新野先生がAちゃんの健康観察をするのも兼ねて朝ごはんを持ってくるけど、食べれそう?」
「はい」
「じゃあそれまでの間に、Aちゃんの髪の毛を結ってもいいかしら?」
「髪、ですか」
山本先生はとびきりかわいく私に微笑みかけた。
*
「できた。ふふ、かわいいわよ」
山本さんは、自分の懐から出した櫛と元結を使って、私の髪の毛を一つにまとめて結った。
「あ、ありがとうございます……あの、山本さん」
「なあに?」
「服の着方が合っているか見てもらってもいいですか」
私は立ち上がって、全身を山本さんに見てもらう。
「もちろんよ。本当は私が着せて教えてあげようと思っていたのだけど…」
袖や胸元を見ながら、山本さんはごめんなさいね、と言った。
「うん。ちゃんと着れているわ。サイズもぴったり。あ、でもリボンがちょっと曲がってる」
山本さんは、腰のリボンをひっぱって直した。
「これでよし。完璧ね」
「ありがとうございます」
「いいえ。これで明日から着る時も安心ね」
「…」
明日から、という言葉にどう返していいか分からなくなった。
「次は顔を洗いましょうか。今水とタオル持ってくるわね」
私が返事をするより先に、山本さんは部屋を出ていってしまった。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時