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山本さんが水を汲んできた桶にタオルを沈めて絞り、濡れたタオルを私に手渡す。
私はそれで顔を拭いて、それが終わると山本さんは桶とタオルを片付けにまた外へ出て、戻ってきた。
｢これで身支度はよし、と。あとは新野先生が来るのを待つだけ…｣
その時、すみませーんと障子の外からこちらに声がした。
この声は多分新野さんだ。
｢タイミングぴったりね｣
言いながら、山本さんが障子を開ける。
｢新野先生｣
｢山本シナ先生。いらっしゃったんですね｣
そこには思っていた通り新野さんがいた。
新野さんの手には、昨日の雑炊の時と同じお盆。
｢おはようございます。健康観察をするのと、朝食を持ってきました。それから｣
新野さんは自分の隣へと視線を向ける。
私も目でそれを追っていく、と、
｢保健委員会でーす！｣
そこにずらりと並ぶ保健委員の5人が全員声を合わせた。
しかもみんな揃って朝食の乗ったお盆を手にしている。
食堂があるって言ってたから、これはもしかして…
｢おはようございますAさん！｣
｢お、おはよう、乱太郎くん…｣
元気な挨拶に押されつつ、私は返事をする。
｢Aちゃんと朝ごはん一緒に食べようと思って、保健委員みんなで来たんだ。迷惑じゃなければだけど、どうかな？｣
部屋の外から伊作さんに微笑まれる。
やっぱり、そう言い出すんじゃないかと思った。
1人で居たいようなきがするけど、なんて言おう。
｢え…っと…｣
｢あら、いいじゃない｣
私が断ろうと思ったところで、山本さんが言うのに先を越されてしまった。
｢賑やかで楽しくなるわよ｣
｢え、は、はい…｣
｢私は今日くノ一教室の授業があるし、もう行かなきゃいけないから、新野先生と保健委員のみんな、Aちゃんをよろしくね｣
山本さんはどうやらこの場を新野さんと保健委員に任せて行ってしまうみたいだった。
｢授業が終わって、そうね…お昼の時にまたここに来るわ。ちょうど良いから保健委員の子たちから忍術学園の話でも聞かせてもらったらどうかしら｣
私を置いてけぼりにして話が進んでゆき、ぽかんとしていると山本さんは安心させるように私に微笑みかけた。
｢じゃあ、またあとでね｣
あっという間に山本さんは部屋を出ていってしまった。
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作者名：加糖 雪 | 作成日時：2021年4月6日 16時
