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「今日からここがあなたのお部屋。何か困ったことがあったら遠慮なく言ってちょうだいね」
言いながら、山本さんは部屋へと入って蝋燭に火をつける。
部屋にあたたかい灯りが満ちる。
「ありがとうございます」
私も部屋の中へと進んだ。
真正面奥には低くて小さめの箪笥が1つ。
右側には壁につけるようにし置かれた長机と、その横に蝋燭がある。
「ここ、しばらくの間人が使っていなかったから何も無いの。掃除は定期的にしていたみたいだから汚くはないと思うけれど…今布団とか必要なもの持ってくるから、持ってるものは適当に置いて座って待っててね」
私は黙って頷き、部屋を出ていく山本さんを見送った。
こんなに面倒を見てもらえるなんてと、ありがたい反面とにかく申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
本当は私も山本さんが色々と準備してくれるのを手伝いたいが、身体がこの様じゃ断られるのがオチだろう。
「こんなけが、大したことないのになあ…」
自分の傷と火傷を見ながら、1人呟いた。
死のうと思っている私にとっては、こんなけがはもう何でもないのだ。
私がこの学園を出られるのはいつになるのだろう。
私は誰にも迷惑をかけずに息をやめたい。
だから、学園の中で死のうとするのは絶対にしないと決めた。
何よりここには自分よりずっと幼い子達がいることも、私は知ってしまっているのだ。
隙を見て学園を抜け出せないだろうか。
…なんとなく、忍術を使って追いかけてきそうな気がする。
どんな忍術かはわからないけど、学園長さんや伊作さんのあの感じだと、まだ治ってないでしょう、とか言われてしまいそうだ。
忍者から逃げられる自信ははっきり言って全くない。
すぐにバレて捕まるだろう。
それなら、やっぱり私が早くこの身体を治すしかない。
ある程度治ったら、「お世話になりました」と置き手紙でもして出ていこう。
私がもう大丈夫だという姿を見せれば、追いかけてくることもないはずだ。
(うん。きっとそれがいい)
私は部屋の真ん中でひとり頷いた。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時