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「それじゃあ、私もこれから用事があるので先に戻りますね」
新野さんは立ち上がって、障子の方へと歩いた。
「わかりました」
既に箸を持っている伊作さんが返事をする。
「新野さん、朝食を運んできてくれてありがとうございました」
私は新野さんが障子を開ける直前に、あわててお礼を伝えた。
「どういたしまして」
こちらに振り返った新野さんは笑って、そして部屋を出ていく。
(みんな、きっと私に構ってる時間なんて本当はないのに、わざわざ時間を作ってくれているのかもしれない…)
私は、既にご飯を食べ始めている保健委員の人たちの方を見る。
きっとあの子たちだってこの学園の生徒なのだから、勉強しなくてはいけないだろうし忙しくない…なんてことは少なからず無いだろう。
考えれば考えるほど、私は何をやっているんだろうという気持ちになる。
「…Aさん、食べないんですか」
私の方に気がついて、声をかけたのは三反田数馬くんだった。
「あ…ごめんね、ちょっと考え事してただけ…」
自分の分の朝食の方へ視線を移す。
見ると、確かに保健委員の人達の朝食より量が少ない。
私は箸を手にして、ゆっくり白いご飯を掴もうとする。
が、なかなか難しい。
指先までしっかり巻かれた包帯のせいで箸が滑るのだ。
それでも何とか箸でご飯を掴む。
「Aちゃん、食べにくくない?食堂から箸以外のもの持ってこようか」
「いえ、箸で食べられます。大丈夫です」
「…そっか」
見かねた伊作さんがそう言ってくれるが、これ以上何かしてもらうのは申し訳なかった。
私は箸で掴んだご飯をゆっくり口へ運ぶ。
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年4月6日 16時