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気がつけばすっかり暗くなってしまっていた部屋に、オレンジ色のあかりが灯る。
ついた火がぼうっと揺れた。
そういえば、火に巻き込まれてけがをしたり、家族や家どころか村ごと失くしたり、…酷いものを見たりしたのに、火に対してトラウマのようなものを抱いていない。
蝋燭の火を見つめていても、ただ蝋燭に火がついている、とそれだけしか思わない。
これは良い事なのだろうか。
自分で自分を守るために、無意識に思い出さないようにしている?
それとも、私が薄情だから何も感じないだけ?
答えはなんとなく、後者のような気がした。
「ええと、Aちゃん、しばらくの間よろしくね」
私の方へ向き直る伊作さんと改めて顔を合わせる。
「はい。…こちらこそ、お世話になります」
「保健委員会として、僕たち保健委員はAちゃんと関わることが多くなるんじゃないかな」
伊作さんは後輩たちの方を見る。
「なので私たちも、」
乱太郎くんが私に笑顔を向ける。
「よろしくお願いします!」
声を合わせた伊作さん以外の保健委員会に、私も「よろしくね」と微笑む。
「悪いな。学園長先生は一度決めたら何を言ってもダメなんだ。そっちにもいろいろ事情があるだろうに」
留三郎さんがそう言うのに、私は「まあ…」と曖昧に返事をした。
次から次へと予想だにしない出来事が起こっていて、なんだかどっと疲れてしまった。
どうしようと考えるべきなのだろうが、頭は思考を放棄して成り行きに任せようとしている。
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加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時