6 - 1 ページ35
ちゃぷ、とあたたかいお湯におそるおそる爪先だけ入れてみる。
足はなんとか沁みないみたいだ。
問題は脚とお腹だ。
私はしばらく湯船と、そこに映った自分の顔を揺らすお湯とにらめっこした。
(傷は閉じてはいる。大丈夫、大丈夫…)
自分にそう言い聞かせ、一思いにお湯へ身を沈めた。
「…いッ…!!!」
やっぱり、痛いものは痛かった。
じくじくと、全身の傷にお湯がしみる。
私は今、忍術学園のお風呂にいた。
学園長さんに「忍術学園にいてもらおう」なんて言われた、あの後。
伊作さん以外の人達は、そろそろ明日のこともあるからと医務室を出てゆき
(保健委員の子たちは「保健委員なのでまだ居ます!」とかなんとか言っていたが、留三郎さんに半ば無理やり連れていかれた)、
そのあとしばらくすると医務室にやっと新野さんが戻ってきた。
その新野さんは黒い忍び装束のいかにも「くノ一」な美人な女の人を連れていて。
背が高くすらりとした身体と綺麗な顔立ちに見とれかけたところで、「私は山本シナ。話は聞いているわ。よろしくね、Aちゃん」と微笑みかけられた。
新野さんと山本さんは、私を忍術学園にしばらくの間置くことが正式に決まったと告げた。
私は気の抜けた返事しかできなかった。
学園の最高権力者である学園長さんが、目の前で「決まりじゃ!」と言っていたので、まあ、まず覆ることは無いだろうなとは思っていたが。
そして、山本さんに
「これからのことはまあいろいろあるけど、説明する前にとりあえずお風呂に行きましょう」
となんだかよく分からないまま、しかも山本さんに「けがをしているから」とお姫様抱っこされて、風呂場に連れてこられたのだった。
はあ、と息を吐くと、両手をお湯から出して腕を前に伸ばす。
右は二の腕あたりから手の甲まで火傷がある。
左にもところどころ火傷と、木の枝で引っかけたみたいな引っかき傷、転んだときに出来たのであろう擦り傷。
見てるだけで痛々しい傷の数々。というか実際お湯が沁みて痛い。
もっと痛いのは両脚。その上をいく痛みがあるのは左脇腹だ。
117人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「忍たま」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
加糖雪(プロフ) - Hanakoさん» ありがとうございます!^^ (2021年4月25日 21時) (レス) id: ac64387404 (このIDを非表示/違反報告)
Hanako - 面白い!! (2021年4月17日 18時) (レス) id: 1d8bf8714f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:加糖 雪 | 作成日時:2021年3月31日 9時