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二十六輪 ページ26

それに舗には花魁に与えられた個室の他に、ここで働く従業員達の部屋、禿たちが休む部屋、そして個室のない下級遊男たちが接客をしている大部屋しかないらしい。

下級遊男は個室を与えられていないため、屏風一つでしか仕切られていない相部屋で接客するそうだ。

当然それでは他の人がしている音も自分がしている音も丸聞こえなわけで。

それを好み、敢えてその部屋を使いたがるお客さんもいるそうだが、私には恥ずかしくてとても考えられない。

(浦田花魁に接客してもらってるのは幸運だったのかも…)

嘘泣きやからかわれたこととか何かと思うところもあるが、舗の廊下で迷っている私をここに連れ帰しに来てくれたり、さっきも助けてくれた。

浦田花魁は思っているより案外良い人なのかもしれない。

「他人の情事を見ることが趣味なら、相部屋のが天国だったかもな。」

…前言撤回、やっぱりこの人とは分かり合えない。


あれから寝間に移動して、私たちは各々布団に座った。

すっかり疲れてしまった私は布団に腰をおろすと、ばたんと上半身を倒して大の字に寝転がった。

「はぁぁぁ〜、づがれだぁぁ…。」

両眼を閉じ、ぴんと張っていた身体を解すように息を吐く。

「色気も何もねぇな。」

聞こえてきた罵言に瞑っていた目を開けて、花魁をむっと睨む。

「どうせ色気ない生娘ですよ!!」


「…黙ってりゃ可愛いのに。」

もっと罵言を言われるのかと思ったが、花魁はぼそっと何か呟いただけだった。

そのせいで浦田花魁がなんて言ったのか分からず、「何ですか?」と身体を起こして花魁に近寄る。

すると花魁は「なんでもねぇ。」と言ってふいっと顔を背けてしまった。

「なんですかそれ、余計に気になりますよ。」

はぐらかされると気になってしまう性質の私は、そっぽを向いた浦田花魁の顔を見ようとする。

しかし花魁は片手で顔を隠し、「うるせぇ!」と空いた手をぶんぶんと振って私を払った。

そんな花魁を怪訝にも思ったが、さっきまでの余裕そうな花魁とは違って子供のような花魁に吹き出す。

「ふふっ…」

「…なに笑ってんの」

花魁は眼だけこちらに向けてじと、と私をみた。

「いや花魁様にもそんな1面があるんだなと。」

笑いながら言う私に花魁は不機嫌そうな表情を浮かべたが、何処か楽しげにも見えた。


「…ていうか、さっきから花魁様ってなんなの。普通に浦田って呼んでよ。」

花魁から発せられた言葉の意味が分からず、数秒ぽかんと花魁を見つめる。

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設定タグ:歌い手 , 浦島坂田船 , 花魁   
作品ジャンル:恋愛
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藍瑠(プロフ) - 夜さん» ありがとうございます!そう言って頂けて本当に嬉しいです。続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - ウルさん» ありがとうございます!嬉しいです、続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - 匿名希望さん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - Haoto-ハオトさん» ありがとうございます!更新不定期ですが、気長にお待ち頂けると幸いです! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)
藍瑠(プロフ) - えゆさん» ありがとうございます!続編もよろしくお願いします! (2022年3月15日 16時) (レス) id: 52af00e4b1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:藍瑠 | 作成日時:2020年3月16日 20時

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