三振目「私の犯した罪の話」 ページ5
まず、こんのすけと鶴丸に言わなきゃいけない事がある、私は刃物が怖いの、所謂刃物恐怖症の様なもの。
まぁ、驚くよね、よく刃物が怖いのに刀剣の付喪神を率いる者の役割を引き受けたなって話、まぁ引き受けたんじゃなくて押し付けられたというか、無理矢理やらされる事になったんだけど…
まぁ、そこはどうでもいいとして、肝心なのが何故私が刃物が怖いか、って事だよね。
勿論私だって最初から刃物が怖い、嫌いって訳じゃなかった。寧ろ鶴丸みたいにとっても綺麗な刀を作り上げる様な人の子孫、刀は大好きだった、こう見えて自分で刀を作ったりもしたんだよ。
勿論その日も刀を打った、出来上がったのは短刀で、その日打った短刀は今までの刀より随分と上手く打てたの。
それが嬉しくて、私はその短刀を愛刀として、凄く大事にしていた。
毎日手入れを欠かさずに、磨き上げて、まるで短刀に何かが宿っているかの様に短刀もきらきら輝いてた、でもある日、何時もの様に短刀を手入れしていると名も知らぬ男が急に私の元へ押し掛けてきた。
男は、叫び散らした。
何でお前みたいな女が俺よりもいい刀を打てるんだ、許さない、許さない、と。
男は壁に飾っていた私が打った刀を手に取ってそのまま、床に叩きつけて…折った。
私はやめてとその男を止めようとした、けど男は聞く耳を持たず次々と刀を折っていった。
あっという間に大切に飾っていた刀達はみな折られ、残るは私の愛刀である短刀のみとなってしまった。
男は無慈悲にもその短刀にも目をつけた。
他の刀よりもより一層丁寧に手入れを施しているのを見て更に男は半狂乱になり私を突き飛ばしてその短刀を手に取った。
そして、突き飛ばされて体勢を崩した私が最後に見た光景は…短刀が真っ二つに折られる所だった。
その後は、絶望で何があったか私自身良く覚えていない、けど、男は執拗に私の短刀を踏んだり叩き付けたりで、男がその場を去り、残っていたのは、元の形が分からないほど粉々になった私が打った刀達だった。
私は腰に下げていた小袋を手に取り、封を開ける。
カチャカチャ、と音を立てる金属。
そう、これは私の短刀の破片、残骸。
御守りとして、今もずっとこうやって持ち歩いているの。
でも、そのせいで私は家族や身内からこう呼ばれる様になった。
五条の遺伝子を引き継いでおきながら、刀を折った、折れた刀に縋る、出来損ないだ、と。
これが私の過去、刀を折ってしまった罪の話。
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作者名:蝉時雨 | 作成日時:2019年9月15日 15時