検索窓
今日:5 hit、昨日:3 hit、合計:11,598 hit

拾伍 【鬼の手に剣】 ページ16

「ーーぁ、あぁ...!」
ずりずりと尻餅をつきながらも逃げるように後ずさる。
怖い、怖い...!と桜華は恐怖で歯をカチカチと鳴らした。
「くっ...娘には手を出させんぞ妖め...ッ」
華柳が破魔の剣を鞘から抜き、その鋭い切っ先を妖に向けた。
それに続き使用人たちもそれぞれ武器を妖に向ける。
だが妖は怯む様子もなく、こちらを見て嗤うばかりだ。

『破魔の剣...!!ひひひ...』
『たかが人間がそのような刀を扱えるか…』
「な、何がおかしい...!?」
華柳が妖に向けて叫ぶ。だがその手は僅かに震えている。
妖は一層笑みを深くした。


『《恐れ》を抱く者にその刀は使えぬ...貴様われわれを恐れているだろう…!ひひひ...』
「だ、黙れぇえ!!」
華柳が大きく刀を振り下ろす。だが、
妖の身体に傷は一切ない。
華柳とその使用人たちは目を強ばらせた。


「っ、くそ...私は、私は恐れてなどいない...!!」
「父様...!」

『残念だったな人間!!ひゃひゃひゃひゃひゃ....!!』
ぐわっっ、と妖の口がこれでもかと開かれる。それは桜華たちを意図も簡単に飲み込んでしまえそうに大きく。
「ーーっ、」




刹那、銀色の風が目の前を横切った。



『ァァァアギャァァァァアッッッ!??』

ぶしゅぅう、と目玉から噴水の如く赤い血飛沫が溢れ出す。
周りの妖たちがざわつく。そして、あの清々しい気配。


まさか、と桜華はそちらへ顔を向けた。



淀み暗い中に流れる白銀。

「ーー、彪雅...?」

涼やかな金色に桜華は息を飲んだ。

『《鬼》!!《鬼》だぁぁあ!!!』
『構わぬ!!たかが《半鬼人》だ!!喰うてしまえ!!』
他の妖たちが一斉に彪雅に襲いかかる。
それに彪雅は表情を変えることなく、立ち向かった。

目の前に広がる光景。
次々と崩れ落ちる妖たち。減っていく邪気。
血で汚れていく鬼。

桜華だけでなく、華柳も目を奪われていた。

ーーなんて恐ろしく、荘厳で、美しいのか。

人間とかけ離れた、だが人間に近いその姿。不可思議で、だが美しい。

彪雅の目が華柳の持つ破魔の剣に向けられた。
「ーーーそれを!!」
彪雅がそう叫ぶと華柳はすぐ様理解しそれを投げ渡した。
まるで、彼が持つのにふさわしいとでも言うように。

鬼の手に破魔の剣が握られ、

残った数匹の妖に向けて一振りする。すると、

ザシュッッ、と肉を斬る音が響き、妖たちの体は綺麗に切り裂かれた。

『ぎゃぁぁぁぁぁぁあああッッッ』


じゅう、と切られた肉片が浄化され消えていった。

終わり ログインすれば
この作者の新作が読める(完全無料)


←拾肆 【鬼を捜しに 弐】



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (22 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
14人がお気に入り
設定タグ:オリジナル , 和風 , 妖怪   
作品ジャンル:ファンタジー, オリジナル作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

雪麻呂(プロフ) - 雨咲☆智華さん» 初コメありがとうございます!!それに面白いだなんて嬉しいです(≧∇≦)拙い文章力ですがこれからもよろしくお願いします(´∀`*) (2017年5月28日 22時) (レス) id: 91fb32a126 (このIDを非表示/違反報告)
雨咲☆智華(プロフ) - めちゃくちゃ面白いです!なんていうか、こういう和風な話?すごい好きです!!更新待ってます! (2017年5月28日 21時) (レス) id: e9c8a5e518 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:雪麻呂 | 作成日時:2017年5月7日 5時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。