自由人 28 ページ30
図書室にて。
『………………』
「………………」
な ん で こ こ に い る 。
さっきのおっとり女子が、そこにいた。
すっごい気まずいんですけど。
そういや図書委員だったわ。
さっきからちらちらと視線が痛い………
「………っ、あの……」
がたんと少し勢いをつけて、おっとり女子が立った。
またバレー部のことを聞かれるんだろうか。
めんどくさい。
と思っていたら。
「さ、さっきは……ごめん、なさい………」
『え。』
え、「ごめんなさい」?
「一ノ瀬さんが……バレー部の人と……
岩泉先輩と仲が良いのが、ちょっと嫌で……
それで、嫉妬しちゃって……」
………あ、この人岩泉先輩が好きなんだ。
「もちろん、一ノ瀬さんが悪いわけじゃないんだけど……
でも、何て言うか……
と、とりあえずごめんなさい!」
ガバッと頭を下げるおっとり女子。
………なんだ、普通に素直な子じゃん。
私も椅子から立ち上がった。
そしてその子の前まで行き、顔を覗き込む。
『もういいよ。』
「………!」
『私と岩泉先輩には何の関係もない。
それはわかったんでしょ?』
「……うん………」
『それに、その資料。』
おっとり女子が手に持っている資料は、朝私に渡してきたものと同じ。
つまり、この子は結局、私に雑用を押し付けていないってこと。
自分で反省して、私に何も言わなかったものの、資料を持ち帰った。
『あんたは充分反省してる。それはわかったから、もういいよ。』
「………本当に、いいの……?」
『うん。
そうだ、名前教えて!』
「………皆川…いのり。」
『いのりね。覚えた!』
「で、でも私……友達一人もいないし、仲良くなっても得しないよ?」
………………ふっ。
『奇遇だね。私もひっっっとりもいないの。』
しばらくの沈黙。
その後、同時に吹き出した。
なんでもない、昼休みの図書室。
初めての友達ができました。
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作者名:紺野いろは | 作成日時:2016年12月26日 18時