検索窓
今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:167,863 hit

25.少しだけ…おやすみなさい ページ27

.






目を閉じて、神経を集中させる。


開いた唇から、空気とともに私の生気と畏れを送り込む。


完璧に傷を治す事は出来なくても、止血して命を繋ぐことくらいならできると思う。


というか、やらないといけない。


たとえ、そのために命を削る事になったとしても。



「………っふ……」



あー…頭がクラクラしてきた…。


鯉伴を抱きしめている手の感覚がよく分からない…。


閉じていた瞼を開けると、ぼやけて焦点が定まらない…。


それでも、なんとか見えるようにし、瞳を動かして傷の具合を見る。


とめどなく流れ出ていた血は、なんとか止まったようだ。


それを確認して、ゆっくりと顔を離した。



「……鯉伴…?」



薄っすらと血の気の戻っている顔に、ホッとしながら声をかける。


反応が無いんだけど…気絶してんのか?


まぁ、生きているならそれでいいか…。


鯉伴の体を地面に横たえて、辺りを見回した。


さっきまで座り込んでいた少女は、刀もろとも何処かに消えていた。


念のため気配を探ってみるも、それらしいものはない。



「……あ、れ……ヤベッ…」



くらり、視界が反転する。


軽い衝撃が体を襲った。


頰に当たる地面の冷たさで、自分が倒れた事に気がついた。


手をついて体を起こそうとするも、全くと言っていいほどに力が入らない。


うわぁ…、マジか…。


これからどうしようか…なんて、考えてるうちに、意識が遠のいていく。


視界がキュッと狭まり、続いて真っ白に染まる。


あー…、これはほんとに…。



「…ヤバい…な…」



リクオが皆んなを呼んでくれると思うから安心だけれど。


このまま眠って、起きれるかは不明だ。


何しろ、私の持っているほぼ全ての生気と畏れを鯉伴にあげちまったからな…。


まぁ、それでも悔いはない。


私は、自分がした事に誇りを持つよ。


でも、少し疲れたかな。


…だから…



「…少しだけ、寝かせてくれ…」



今日は、もう動けそうにないから。


おやすみなさい…。









.

26.満開の桜と貴方と→←24.死の間際で



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.6/10 (53 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
121人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

楸ヒナタ(プロフ) - 李桜さん» 面白いなんて…!ありがとうございます!嬉しい限りです!!これからもよろしくお願いします! (2016年2月1日 17時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
李桜 - 小説面白いッス!私も文才あったらなァ〜 (2016年2月1日 0時) (レス) id: 888568db42 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - ゆーなさん» ミツカッタ…。行動が早いっすね。 (2015年9月14日 21時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
ゆーな - ミツケタ...... 。 これかな?これだよね? (2015年9月14日 21時) (レス) id: be54fb8e5e (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 飛鳥さん» うわぁ!そんな事言ってもらえるなんて…凄い嬉しいです!!コメント、ありがとうございます!! (2015年8月14日 22時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:楸 ヒナタ | 作成日時:2015年6月14日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。