19.心が落ち着くんだ ページ21
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リクオの小さな手を握って、ゆっくりと歩く。
”さぁ、散歩に出かけよう。”となった時、鯉伴は首無に捕まったので、私とリクオは先に行くことにした。
ハ、日々の行いが悪いからこうなるんだよ!
なんて、内心であざ笑っていたりする。
問題児と言われた私は、リクオが生まれてからはリクオに付きっきりでふらりと出ることも少なくなった。
それを話したら、首無に微妙な顔をされたけど。
気にしないでおこうか。うん。
「見ろ、リクオ。綺麗な山吹だろう?」
「やまぶき?」
「そう。この花の名前だよ」
一面に咲き誇る山吹の花。
…あいつと同じ名前の花…。
あいつは、もういないんだ…
チクリと痛んだ胸の痛みを、笑ってごまかす。
「お姉ちゃん?大丈夫?」
「ん?どうしたよ、急に。」
「なんか…お姉ちゃんが泣きそうに見えたから。どこか痛いの?」
覗き込んできた大きな瞳には、眉を下げた頼りない自分が写っていて。
リクオに気を使わせてしまう自分が、どうしようもなく情けなくて。
思わず、屈んでリクオを抱きしめた。
リクオの肩に顔を埋めて、力いっぱい抱きしめる。
「お姉ちゃん?」
困惑しているリクオの声が、すぐ側に聞こえる。
いきなり抱きつかれたら困惑するのもわかるけど。
今だけ、今だけは…
「こうしててくれ…」
自分でも驚く程に、力なく掠れた声が出た。
もう、大丈夫だと。
あいつのことは過去として受け止めたと思っていたけれど。
私は自分が思っているよりも弱かったらしい。
あいつを連想させるこの場所にいると、どうしようもなく泣きたくなる。
「大丈夫、大丈夫だよ。」
「っ…!」
私にされるがまま、じっと突っ立っていたリクオが、不意に腕を回してぽんぽんと背中を軽く叩く。
多分、リクオなりに気を使ってくれたんだろう。
その優しさに、頬が緩む。
ただ、それだけなのに、心が落ち着く。
あぁ…リクオは凄いなぁ。
「…ん、もう大丈夫だ。ありがとう、リクオ」
「本当に?」
「あぁ、大丈夫だよ。心配かけたな」
リクオから体を離してニコリと笑うと、ホッとしたように眉を下げ、ぷくっと頬を膨らませた。
「もう、ビックリしたんだからね!お姉ちゃんのバカ!」
「あはは、悪かったって。許してくれよ、な?」
「むぅ〜!」
ぽかぽかと叩くリクオが可愛くて。
スッと心が落ち着く。
リクオ…大好きだ!!
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楸ヒナタ(プロフ) - 李桜さん» 面白いなんて…!ありがとうございます!嬉しい限りです!!これからもよろしくお願いします! (2016年2月1日 17時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
李桜 - 小説面白いッス!私も文才あったらなァ〜 (2016年2月1日 0時) (レス) id: 888568db42 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - ゆーなさん» ミツカッタ…。行動が早いっすね。 (2015年9月14日 21時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
ゆーな - ミツケタ...... 。 これかな?これだよね? (2015年9月14日 21時) (レス) id: be54fb8e5e (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 飛鳥さん» うわぁ!そんな事言ってもらえるなんて…凄い嬉しいです!!コメント、ありがとうございます!! (2015年8月14日 22時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楸 ヒナタ | 作成日時:2015年6月14日 17時