18.鈍っていたのかもしれない ページ20
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あっという間に時は流れて…
「お姉ちゃん!起きてよ!」
「んー…。ハイハイ…」
リクオは三歳になり、相変わらずのヤンチャっぷりで皆を困らせている。
主な被害者は、首無、毛倡妓、つらら、青田坊辺りだな。
あ、あと黒田坊。
今だってほら。
用もないのに、毛倡妓の着物の裾を踏んで笑ってる。
「ちょ、リクオ様。やめてください!」
「あはは!怒った怒った!」
「鯉千様〜!」
「はぁ…リクオ。それ位にしとけ。」
一年前よりも、少し重たくなったリクオを抱き上げる。
子供の成長は早いなぁ〜。
「あー、もう!邪魔しないでよ〜!」
「ハイハイ、朝ごはん食べに行くぞ〜」
「お姉ちゃんのバカァ!」
イタズラを止められたのが気に食わないのか、腕の中でバタバタと暴れ始める。
そんな姿ですら可愛いと思う私は末期なのかもしれない。
まぁ、そんなこんなで朝食も食べ終えて、現在地は屋根の上。
胡座をかいた足の上にリクオを座らせて、煙管をふかす。
「お姉ちゃん、風が気持ちいいね」
「そうだな〜。」
「僕、ここ好きだよ!」
「あぁ、私も好きだよ。でも、危ないから一人で来たらダメだぞ?」
「うん!わかった!!」
元気よく返事をしたリクオの頭を撫でる。
相変わらずフワフワで気持ちいいな…
フワリ、風が桜の花びらを運ぶ。
甘い、爽やかな香りが鼻を擽った。
「お、こんなところにいたのかい」
「お父さん!!」
「鯉伴か。何か用か?」
ふらりと現れた鯉伴に驚くでもなく、嬉しそうに顔を綻ばせるリクオ。
流石だなぁ…なんて。
ひょいと、膝から重みが消えてリクオは鯉伴の腕の中に。
「おい、返せよ」
「いいじゃねぇか。お前はいつも抱いてんだからよ」
「……チッ…」
隣に腰をおろした鯉伴が、リクオと戯れる。
楽しそうなリクオの声が響いて、平和だと実感する日々。
実際、数百年前は抗争ばっかりだったのに比べて、現在は何もないからな。
鯉伴…二代目の頑張りのお陰かな。
「そうだ、こんなに天気も良いんだし、散歩にでも行かねぇか?」
「散歩…たまには良いかもな。リクオも行くだろう?」
「うん!!行くっ!」
ニッコリ笑うリクオは本当に可愛くて。
鈍っていたのかもしれない、第六感ってやつが。
私がもう少し危機感を持っていれば、あの大惨事は免れたかもしれないのに。
…なんて後悔するのは、あと少し先のこと。
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楸ヒナタ(プロフ) - 李桜さん» 面白いなんて…!ありがとうございます!嬉しい限りです!!これからもよろしくお願いします! (2016年2月1日 17時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
李桜 - 小説面白いッス!私も文才あったらなァ〜 (2016年2月1日 0時) (レス) id: 888568db42 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - ゆーなさん» ミツカッタ…。行動が早いっすね。 (2015年9月14日 21時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
ゆーな - ミツケタ...... 。 これかな?これだよね? (2015年9月14日 21時) (レス) id: be54fb8e5e (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 飛鳥さん» うわぁ!そんな事言ってもらえるなんて…凄い嬉しいです!!コメント、ありがとうございます!! (2015年8月14日 22時) (レス) id: 5a9f26663b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:楸 ヒナタ | 作成日時:2015年6月14日 17時