無我夢中 ページ30
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「───私、やっぱ行けない。」
そう言い残して私は学校を飛び出した。
急にどうしたと疑問の声を上げる三人にごめんとだけ告げて、私はとにかく走って。
男達の場所なんて分からない。それでも私はこの足が動く限り探さなきゃ行けない。
あの時、宿儺が私を助けてくれたように。
私も宿儺を助けたいと、ただ強くそう思った。
皆が噂するような悪人じゃなかった。本当にどこまでも不器用でしょうがないやつだと知った。だから私は、そうして彼を見捨てる選択肢などとうに頭には無くて。
「……っ!」
遠く見える、男達の姿。
うち一人は血だらけで、フラフラと足元がおぼつかない。
握っていたスマホで警察に通報。
……でも、警察が来るまで、宿儺は。
怖かった。足が震えて、あの時みたいにまた動けなくなって。
───違う。
動け、動かなきゃ。宿儺が死んじゃう。
近くにあった三角コーンを担いで、こちらに背を向けた男目掛けて一目散に走り寄る。
走り寄って、頭目掛けて思い切り振り下ろした。
「……いっ、てぇ……」
頭を抑えて倒れ込む男。
そして固く閉じた目をゆっくりと開いた、宿儺と目が、あって。
「…………お、前」
はくはくと開いては閉じる口の言いたいことは分かっている。
何故来たんだって。何故こんなところにって、優しい宿儺はきっと私の心配をしてくれてるんでしょう。
「ちっ、……こいつ!!」
「きゃっ!」
「A!!」
髪を思い切り捕まれ、私は後ろに倒れ込んだ。
それを見た宿儺が私を呼んで近づこうとしたけれど、虚しくももう一人の男によって引き止められてしまって。
「……よん、だから」
「あ?」
「警察!!呼んだから!!
……あんたら、もう捕まるからね!!」
警察という二文字に、男たちは分かりやすく焦りを見せた。焦って、私たちを置いて逃げ出そうとした、のだけれど。
「……いや、どうせ捕まんなら、最後に一発……!!」
手に持った廃材。
振りかぶった男の先には、既に負傷した宿儺の姿。
彼は、避け、られない。
「────……宿儺!!」
無我夢中で間に割って入った。
一瞬の衝撃と、体を走り抜ける痛み。
最後に見えたのは、今にも泣き出しそうな宿儺の顔で。その顔があんまりに可哀想だったから、朦朧とする意識の中、私はせめてもと、彼に笑いかけた。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時