11、神 ページ12
「…俺がいないあいだになにがあった?」
「窓を突き破って…入ってきた」
帰って来て真っ先に目に飛び込んで来たのは血溜まりの中に倒れる8本の腕を持つ異形だった。コトから詳しい事情を聞き、改めて異形を確認する。
死因はコトの弾丸が脳を破壊したこと。体は白っぽく、皮はぶよぶよとしていて水死体を連想させた。なんどか依頼で水死体も回収したことがあったから見たことはあった。だが皮はぶよぶよしているのに対してその下、筋肉や内蔵はものすごくがっしりしているという軽い矛盾もでている。しかし偶然とは言え、手がかりが手に入ったことは今まで感じたことのないくらいありがたかった。
*
その日から俺はこの異形のことを徹底的に調べはじめた。まずは異形の死体をジェイドに頼んで解剖してもらうことにした。さすがのジェイドも初めて見る異形を前にかなり驚いていたが…。その後は解剖の結果が出るまでひたすら情報収集を行う。ここ最近この異形に関する情報が多く出回っていたのだ。
まず失踪事件はなんとヨーロッパ全土で多発していることが新たに分かったが、ヨーロッパの中で最も失踪者が多いのがジャルドーレ通りだった。さらに情報屋のモールの話だとこの異形は失踪事件が出始めてからヨーロッパで度々目撃されることがあるという。どれも8本の腕を持っていることからモールの中では観音様にちなんで『観音兵』と呼んでいるものもいるらしい。
ある日、いつもどうり情報収集をしているとジェイドから連絡があった。どうやら解剖結果が出たらしい。
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「あの異形を解剖したところ、中から5僂曚匹隆鸚乎遒一匹見つかった。この寄生虫『パイルター』はヨーロッパに生息している寄生虫の一種で今回見つかったものは改良型と思われる。」
「こいつに寄生されると宿主は新陳代謝が異常に高スピードで行われ、細胞が一気に乾燥状態になる。つまり常に餓えて食料を欲し、常に乾いて水を欲する状態になる。あの異形の体が外はぶよぶよしていたのに筋肉や内蔵はがっかりしているのはそのためさ。水分の過剰摂取で細胞は膨張して皮膚は腐り始めているのに、養分を次々に接種するもんだから筋肉や内蔵は発達していく。腕が増えた理由まではわからなかったよ。進化して増えたのか、理屈はわからないけど人同士を繋ぎ合わせたか。」
「そんな技術あるのか?」
「わからないけど…最も分からないのはどう動いているのかだ。パイルター一匹で人の体を動かすのは、実は無理だ。」
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地獄狼(プロフ) - 白い雪さん» コメントありがとうございます!これからも頑張って更新していきますので、よろしくお願いします! (2018年11月24日 17時) (レス) id: 9982f25173 (このIDを非表示/違反報告)
白い雪(プロフ) - 何時も楽しく見てます( ˘ω˘ ) (2018年11月24日 17時) (レス) id: 91ed43297b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:地獄狼 | 作成日時:2018年1月4日 23時