やっつ ページ8
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コンコン、と控えめなノックが響き、私はタオルに埋めていた顔を起こす。
「……Aちゃん、ちょっといいかしら?」
そう言って入ってきたのは、おばさん。
こんな夜に、一体なんの用だろうか。
私が眉をひそめていると、おばさんはいいにくそうに口ごもってから、意を決したように口を開いた。
「あのね、実は……貴女を施設に入れようと思っているのよ」
その言葉に、少し目を見開く。
でも、お母さんが死んだ時からなんとなく覚悟していたことだったので、すぐに表情を戻した。
「ほ、本当は、私達の家で一緒に暮らせたら、って思っているのよ? ……でも、うちの子も高三で、受験だし。それに、貴女も同じ年頃の子と一緒の方が楽でしょう?」
歪な苦笑を浮かべながら、おばさんはいう。
私は心の底から叫び出したい衝動に駆られた。
【嘘つき】
【はっきり言えばいいのに】
【私のことが邪魔なんでしょう?】
……でも結局、子供は大人の加護下にあって、逆らうことなんかできやしないのだ。
いつだって大人は、子供の意見なんか無視して物事を進めてしまう。
「……はい、そうですね。わかりました。私もその方がいいと思ってましたし」
当たり障りのない返事をして、ニコリと口元に笑みをつくる。
ほら、こうしておけば、大丈夫。
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麗夢 - 前見た時本当に感動してまた読みに来ました。私が知っている夢小説の中で1番大好きな作品です! (3月1日 23時) (レス) @page44 id: 6ebe956d7c (このIDを非表示/違反報告)
にっこり(プロフ) - 感動したやっぱりお父さんって大事だなぁ後光輝君もいいな! (2021年8月25日 7時) (レス) id: ec120adb39 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉(プロフ) - とても感動しました!!!!泣きながら読んでました!この作品に出会えて良かったです!ありがとうございました!!!! (2020年6月11日 0時) (レス) id: e2f068ce6d (このIDを非表示/違反報告)
芥川とミルクティ - 何度見ても泣きます。もう最後なんか、嗚咽が止まりません。本当に感動する素晴らしい作品です。作者様のとても美しい文章に惹き付けられます。 (2020年3月14日 20時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
哀駒(プロフ) - 完結おめでとうございます^^もう泣きすぎて明日目腫れそうです…w (2020年3月10日 22時) (レス) id: 677b3c59a5 (このIDを非表示/違反報告)
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