みそじ あまり ふたつ ページ34
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それから私は、しばらくずっと公園の虫を眺めたり、辺りを観察したりして暇を潰していた。
そして、ようやくあと一、二時間でお父さんも出てくるかという時間帯になった時。
急にその場が暗くなり、腕に水滴が落ちてきた。
何事かと空を見上げると、どんよりと重い雲から、また水滴が落ちてくる。
雨だ。
そう認識した瞬間、ザアーッと勢いよく雨が降ってきて、私はその場に硬直した。
う、嘘でしょ……。
天気予報ではこんなこと言ってなかったのに……!
濡れるのは嫌いだ。 というか、雨が嫌いだ。
ジメジメするし、ベタベタするし。
とにかく私は雨宿りできる場所を探そうと、くるりと方向転換して走り出……そうとした。
けれど、出来なかった。
──なぜなら、公園の反対側によく知った人物を見つけたから。
「京也……?」
見えたのは、雨の中すすり泣きながら、たった一人きりで歩く京也の姿。
傘もささずに一人で、一体何をしているのだろう。
少し迷ってから、私はカバンからタオルを出して京也の元へ走る。
いくら私が京也に嫉妬しているからと言って、小さい子をこんなどしゃぶりの雨の中放っとくわけにはいかない。
「京也! ……くん!」
「……! ……A、おねぇちゃん……?」
私の声に京也は一瞬ビクリと肩を揺らし、それからぼんやりとこちらを見上げた。
京也の綺麗な黒い瞳は、今はひたすらに暗くて、揺れていて。濡れた体と相まって、酷く哀れに見えた。
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麗夢 - 前見た時本当に感動してまた読みに来ました。私が知っている夢小説の中で1番大好きな作品です! (3月1日 23時) (レス) @page44 id: 6ebe956d7c (このIDを非表示/違反報告)
にっこり(プロフ) - 感動したやっぱりお父さんって大事だなぁ後光輝君もいいな! (2021年8月25日 7時) (レス) id: ec120adb39 (このIDを非表示/違反報告)
藍琉(プロフ) - とても感動しました!!!!泣きながら読んでました!この作品に出会えて良かったです!ありがとうございました!!!! (2020年6月11日 0時) (レス) id: e2f068ce6d (このIDを非表示/違反報告)
芥川とミルクティ - 何度見ても泣きます。もう最後なんか、嗚咽が止まりません。本当に感動する素晴らしい作品です。作者様のとても美しい文章に惹き付けられます。 (2020年3月14日 20時) (レス) id: 9ec8afc8ac (このIDを非表示/違反報告)
哀駒(プロフ) - 完結おめでとうございます^^もう泣きすぎて明日目腫れそうです…w (2020年3月10日 22時) (レス) id: 677b3c59a5 (このIDを非表示/違反報告)
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