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バイトが終わると、スーパーでたくさんの食べ物と飲み物を買い込んで私は風磨のマンションへ向かった。ついこの間行ったばかりなのになんだかすごく久しぶりのような気がして、少しだけ緊張した。
キーケースごと実家に忘れてしまったから風磨の部屋の鍵も当然そこに付いているわけで、鍵を持っていないため仕方なく風磨の部屋のインターホンを鳴らす。引っ越してからすぐに風磨はこの部屋の鍵を渡してくれたから、こんな風にインターホンを鳴らすのって初めてでなんだか新鮮。
「…はい」
「わ、わたしっ、A!」
少し掠れた風磨の声が聞こえて、慌てて自分の名前を名乗ると少しの沈黙の後がちゃんと切られたインターホン。え、このまま無視とかされて出てこなかったらどうしよう、なんて考えたのも束の間のこと、すぐに扉が開いて不機嫌そうな顔の風磨が顔を覗かせた。
「なに…」
「何って、お見舞いしに来たんだよ」
「たいしたこと、ごほっ、ねーよ」
いいから、と咳き込みながら話す風磨を部屋の中に押し込んで私も無理やり部屋に入る。
「熱何度あるの?」
冷蔵庫の中にの買ってきた物をしまいながら風磨に聞く。
「はかってねーからわかんねえけどとりあえずだるい」
ずずっ、と鼻水をすすりながらパーカーのフードを被った風磨が私のすぐ後ろでポケットに手を突っ込んで立っている。いつもはどちらかといえば私が甘えるほうでお兄ちゃんみたいな風磨が、今日は少し子供みたいで可愛くて思わずこぼれる笑み。
「お前…何笑ってんだよ」
「なんでもないよ!とりあえずおかゆ作るね、ベッドで寝てていいよ」
ほとんど私しか使ってないキッチンの前に立って、手際よく準備をすすめていく。寝てなよって言う私の言葉も聞かずにずっと隣で私の手元を見つめる風磨。
鍋に火をかけてお玉をくるくる回していたら、左肩に感じた重み。その後すぐに腰に回された風磨の両手。待って、何この状況。後ろから風磨に抱きしめられるみたいな形になって驚いてコンロの火を消して動かしていた手を止める。
「ちょ、風磨?」
「A、」
「なにっ、てかどうしたの急に」
「お前居ないとやっぱダメだわ」
私を抱きしめている風磨の腕がきゅうっと強くなる。風邪だから人恋しくでもなった?こんな風磨は、初めてでどうしていいかわからなくなってしまう。
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みゆ(プロフ) - ぷぅ∞さん» ぷぅさん初めまして!嬉しいお言葉ほんとにありがとうございます!これからも切なく甘くを目指して完結頑張るので応援おねがい致します! (2019年5月3日 19時) (レス) id: c270fe5c87 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ∞(プロフ) - 初めまして。いつも更新を楽しみにしています。風磨くんの切ない恋にきゅんきゅんしています。更新頑張ってください! (2019年4月30日 18時) (レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆ | 作成日時:2019年4月9日 22時