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「…Aちゃん?」
「え!あ、うん!どうしたの?」
「ぼーっとしてたからさ、髪の毛乾かさないと風邪ひいちゃうよ?」
結局、あの後わたしと風磨が顔を合わせることは無かった。バイトが終わってからも、すぐに風磨は帰って行ってわたしは健人くんと一緒に帰った。
帰って来て、すぐにシャワーを浴びて、リビングでぼーっとしていたらいつの間にか健人くんもシャワーを済ませていてタオルを片手に心配そうにわたしの顔を覗きこんでくる。
「健人くん先に乾かしていいよ?」
「だーめ、じゃあ俺が乾かしてあげる」
洗面所からドライヤーを持ってきた健人くんがソファーに座って、おいで?と手招きをする。嬉しくて、健人くんの両足の間、ソファーの下にちょこんと座った。
「Aちゃん、俺と同じシャンプーの匂い〜」
「このシャンプーすっごいいい匂いだよね!」
「本当?よかった」
優しく健人くんの手で髪の毛をふわふわと触られて少しくすぐったいような感覚。そういえば昔は風磨もよく乾かしてくれたな。自分で乾かせよ!って文句言いながらも優しくて…って、なんで私さっきから風磨のことばっかり考えてるんだろう。
「Aちゃん、菊池となんかあった?」
「へ…!?」
「なんか今日ずっとぼーっとしてるっていうか、元気無いから」
健人くんに見抜かれちゃうくらい、そんなに顔に出てたなんて。
「大したことじゃないんだけど…風磨の機嫌が悪くてなんかちょっとケンカ、っていうか、あっでも大丈夫だよ、すぐまた普通に戻ると思うし!」
「…そっか」
つぎ前髪乾かすよ〜、と言われて体をくるりと健人くんのほうへ向ける。目を合わせるのが恥ずかしくて思わず目を閉じる。
「Aちゃんにはね、」
「…?」
「俺のことだけ考えてて欲しいの」
どういうこと、と聞く前にドライヤーの音が止まって、健人くんの両手が私の頬に添えられる。
健人くんの濡れた前髪が、鼻先に当たって冷たい。ドキドキして、目を開けることが出来ない。だって、私と健人くんの今の距離は、多分、キス出来そうなくらいに近い。
「け、んと、く」
「俺、本当にAちゃんのこと好きになってもいい?」
健人くんの息が唇にかかるくらい近くて、溶けてしまいそう。どう答えていいかわからず、小さく頷くと、ふっ、と小さく笑う健人くん。
「まあ、もうとっくに好きなんだけど」
言い終わると同時に重なった唇は、熱くて甘くて、嬉しいはずなのになんだか泣きそうになった。
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みゆ(プロフ) - ぷぅ∞さん» ぷぅさん初めまして!嬉しいお言葉ほんとにありがとうございます!これからも切なく甘くを目指して完結頑張るので応援おねがい致します! (2019年5月3日 19時) (レス) id: c270fe5c87 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ∞(プロフ) - 初めまして。いつも更新を楽しみにしています。風磨くんの切ない恋にきゅんきゅんしています。更新頑張ってください! (2019年4月30日 18時) (レス) id: 0b53292451 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みゆ | 作成日時:2019年4月9日 22時