【北信介】別の人の女になったで【宮侑】

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「だーもう！侑重いよ」

「カーペットの上にゴロンとしといてください...家までありがとうございました......及川さんが酔い潰したのが悪いんですけどね」

「Aとゆっくりしゃべりたかったからさ。あ、そうだ。もうAは俺らと縁切るつもりかもしれないけど、一応これ」





LINEのQRを開き私に示す。そういえば私、まだ持ってなかったんだ。

今更だが、遠慮なく交換し及川さんのホーム画を覗く。アイコンは大型犬と及川さんの写真。ホーム画は高校生の及川君だった。



「昔からイケメンだったのかよ、クソが」

「あー、もうAちゃんまだ酔ってるの？....もう俺帰るね。なんか侑重すぎて疲れた！」




帰ろ帰ろ！！と一人で騒ぎながら帰っていった及川さんを見送り、リビングに戻ると相変わらず、侑は爆睡していた。

自分も眠いし、もうお風呂も入らずねちゃおうと、化粧落としと歯磨きを気力だけでこなす。しかしその間も侑はカーペットの上で爆睡をかましており、全く起きる気配がなかった。

最後の日なのに、ベッドで1人寝るのも寂しいかな。









「ん...、んぁ？背中痛いわ」




モゾモゾと動く侑によって目が覚めた。


「A、俺めっちゃ今頭と背中が痛いねん」

「ん....」

「Aの作ったシジミ汁が飲みたいから起きて...なぁ、起きろや」

「起きる、起きるて。...もう起きとるて」

「宮家では立ち上がってからが起きたっていうんやで」








知らんがな、と思いつつ。いつまでもごろごろしていると侑が遅刻するかもしれないので、と立ち上がる。しかし、まだ時刻は6時を回ったばかりだった。

だがしかし、お風呂に入らないといけないし、会社にもいかないといけないし...って、今日は公休をとったんだった。









二人でお風呂に入るのキツいな、なんて毎度の事を言いつつ、二人で入る。もう二度と入らへんけどな、とは言えない。





「ええ身体しとるなぁ」

「そりゃプロやからな。皆そんなもんやで」

「指もきれいやなぁ。」

「セッターやけん、当たり前やで」


風呂とバレーの時以外、私とペアルックで着けている指輪の跡をなぞる。何度もこの手に引っ張って貰って、引っ張って。繋いで、握って。









「寂しくなるなぁ」








そんな私の声はシャワーに熔けて、涙は泡と共に流れていった。

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