スラサタンナ聖処 ページ27
厳かな雰囲気のある建物の前に、旅人とパイモンは立っていた。少し後ろに星の姿もある。
旅人が確認をとるように一瞬振り返って星を見ると、星は小さく頷いた。
「じゃあ、行こうか」
「ナヒーダ!」
一番にパイモンが飛び出して行き、その後を旅人と星は歩いていく。
落ち着かないのか、星は辺りを見回していた。
ナヒーダは誰かと話をしているようで、その誰かは放浪者だった。
「こんにちは、ナヒーダ、放浪者も」
「あら、来たのね。その子が前に話していた子かしら?」
「そうだぞ!腰の辺り、神の目の隣だ!」
「本当ね、もっと近くで見てもいいかしら?」
近づくナヒーダに、星はなんの反応も示さなかった。
目線はもっと先の方、旅人がその先を追うと居たのは放浪者だった。
「お前…」
「これはこれは。この前いきなり僕に斬りかかってきた子じゃないか」
「お前ら知り合いか?」
「知り合いと呼べるような仲ではない…」
「いいや?違うね」
星の腰にあった缶詰知識は既にナヒーダの手へと移されていた。
「これはみんなにも見せていいものなの?」
「構わない」
「そう、じゃあ準備はいいかしら」
「ああ」
ナヒーダの手元にある缶詰記憶が光る。
旅人たちの頭にある風景が流れてきた。
それは、カーンルイアの災厄の真っ只中だった。
地は赤く燃え、空は暗い。
この世の終わりのような風景。
純陽の体を持つ一族のあるひとりの女性は、新たな命をその身に宿していた。
彼女の夫も純陽の体を持っているため、その子供も純陽の体を持って産まれてくることは容易に想像が出来た。
その男性もこの災厄で姿を消していた。
彼女は長らく夫に会っていなかった。
とうにこの災厄で命を落としてしまっているのだろう。
純陽の体を持つ者は、純陽を扱えると強いために戦場に駆り出されていたのだった。
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てら(プロフ) - ページ1の1行目、タルタリ"ア"ではなくタルタリ"ヤ"です…細かいことですみません🙇♀️ (7月2日 21時) (レス) @page1 id: 372b4e8b3a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆっく | 作成日時:2023年3月24日 22時