【原神】仙人でも夜叉でもない。凡人でもない。 (ページ25)

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夜になり、ティナリも見回りから帰ってきた。

しかし、村のみんなが夜ご飯を食べている輪の中に星の姿を見ることはなかった。

本当に夜ご飯を食べる気はないようで、村の外れにひとりで立っていた。

旅人は村の人たちに囲まれていたが、その場をパイモンに任せ星の傍に近寄った。

「本当に食べなくていいの？こっちまで持ってこようか」

「大丈夫だ。夜叉は食べなくても生きていける」

「でも星は夜叉の力を持ってるだけで人間って…」

「大丈夫だ。それに、味の濃いものは好まん」

「そっか」

「戻ったらどうだ？向こうでお前を呼んでる奴がいるぞ」

振り向くと、パイモンが旅人のことを呼んでいた。

「え？ほんとだ。じゃあ後でね、星」

旅人は星が何も言わないことを確認すると、どうしたのパイモン？と元の場所へ戻って行った。

深夜。

旅人とパイモンがひとつの布団に入って寝ている。

となりの布団に人の入った形跡は無かった。

その近くにある木。

「やあ、君が璃月から来たって人かな？」

木を見上げた黒い耳が風に少しだけ揺れる。

枝に立っていた星は地面を見下ろした。

「…お前は」

「初めまして、僕はティナリ。
ここのレンジャー長をしているよ」

「…」

「君も璃月を守ってる人だって聞いたんだ」

「…ああ」

「ここはスメールで、守る人は他にいる。
ガンダルヴァー村は安全なところだよ」

「…」

「旅人が、君のために用意したんだ。
せっかくの厚意を無下にする気かい？」

「…」

ティナリは、感情のない顔に少しの困惑を見た。

「もしかして、夜に寝る習慣がないのかい？」

「…」

じっと見つめられていた目はふっと逸らされた。

何も言わないが、その行為だけで何を言いたいのかは簡単に察することが出来る。

表情はわからないけど、とてもわかりやすい奴なんだな、とティナリは口を抑えて少し笑った。

次の瞬間バチっと音がして、上を見上げると少年の姿はなかった。

ティナリはひとつ息を吐くと家に戻る道を辿った。

その途中の旅人たちが眠っている家を覗くと、旅人とパイモンのいる布団のとなり、先程まで誰もいなかった布団の上に星が目を閉じて座っていた。