*･ﾟ*･ﾟアイドル好きで何が悪い*･ﾟ*･ﾟ

BAR ページ7

婚活パーティーを1週間後に控えた金曜日。

数年前から行きつけとなったBARで、隣に座るアカリが大きく息を吐いた。


｢だから言ったじゃない。ストーカーになる前にやめなさいって｣

｢ちょ、声が大きい！それにまだストーカーにはなってない！」


人差し指を口に当てながら否定する私を見て、アカリが呆れたように首を回した。


｢もう片足突っ込んでるわよ。彼に会うために、毎日お店に行っているんでしょう？」

「ぐぅ……っ。反論しかねます」


そうなのだ。

最初は、コーヒーが美味しいから。お料理の味付けも好みだからって自分に言い訳をして毎日カフェに通っていたけれど。


彼がレジの担当じゃなかった時。彼がお休みで会えなかった時に、必要以上にがっかりしている自分に気付いてしまい。

ついには、部屋に貼ってあるポスターの目黒淳くんや、スマホの待受画面の目黒淳くんが、店長さんに見えてくる始末。



｢間違いなくストーカーね。自分に置き換えてみなさいよ。Aに会うために、毎日会社の前に来る男がいたらどう思う？｣

｢え、嫌だよそんなの。気持ち悪い｣

「…………」

「……え、うそ。そういう事？」

「そういう事」



うわー、引くわ。
まさか自分にストーカーの素質があるとは思わなかった。
いや、違うか。アイドルを追っかけている時点で、その気があることに気付くべきだったのか。



｢とにかく、自粛しなさい。通報でもされたら、婚活どころじゃなくなるわよ｣

……確かに。警察のお世話になるのは頂けない。


「ごもっともです……」


何とも情けない状況に、カウンターに置かれたモヒートをひと口飲んだ時だった。




｢……Aさん？｣


頭上から聞こえてきた声。

呼ばれた声に顔を上げて、視界に捉えた顔を見て、身体が固まった。


｢め、目黒淳くん…っ!?｣

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