和也 ページ1
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空は薄暗くて、雨が降りそう
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「ふぅ、いそがないと。」
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大学の授業が終わって、自転車に跨った
今日は4講義でおわり
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大学2年に入って、もう早くも9ヶ月をすぎていた
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「おまえなぁ。俺、正面で待ってろって言ったんだけど。」
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聞き慣れた声が聞こえて、後ろを振り返ると
幼馴染の和也が気だるそうに立ってた。
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和也とは赤ん坊の時からずっと一緒に成長してきた
いわゆる、腐れ縁？
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「えへへ、ごめんなさい。」
「えへへじゃねーよ、教室まで戻って探したわアホ」
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口調はキツイけど、声は柔らかくて
器用に鍵を開ける和也の手を見てた。
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「今日さ、俺ん家でご飯食べてく？」
自転車を漕いで、2人でキャンパスを出た。
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大学生になって、2人共一人暮らしを始めた。
実家は隣同士だったけど、
アパートは徒歩で５分ほどの場所にあって
頻繁にお互いの家を行き来してる。
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「なにその俺が作ってあげる、みたいな言い方。
いつも作ってるの私じゃん。」
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横目で和也を見ながら言うと、
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「おまえの手料理うめーもん」
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そう何ともない顔でさらっと言われた。
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ずるいなぁ、って心の中で呟いて
でも、やっぱりそう言われると嬉しくって
けど、ちょっと恥ずかしくて地面を見た。
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そんな私を見て、ふっ、と鼻で笑った和也。
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ちっさい頃からずっと一緒で
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小学校も中学校も高校も
ずっと、ずーっと隣で過ごしてきた。
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いつも私の隣には和也がいて
和也の隣には、当たり前に私がいた。
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高校2年の夏、
私に先輩の彼氏ができた時があった。
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それからすぐに和也にも年下の彼女ができて、
お互いに気を遣って少し距離ができた時もあったけれど
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和也は2ヶ月も経たないうちに別れて
「おまえといる方が落ち着くわ」
って笑ってた。
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私はと言うと、高校3年の春。
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先輩に大学で好きな人ができた、
って、あっさり終わっちゃった。
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私は大好きだったから、ひどく落ち込んでて。
そんな私を見て和也はいつもみたく
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ふって、鼻で笑って
けど、優しく私を見守ってくれた
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それ以来、いままで恋人はいないし
和也も、いないみたい。
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作者名：べに | 作成日時：2016年12月22日 20時
