【北信介】北くんと、

＊ 介抱。 ページ29

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『ただいまぁ』









玄関から妙に陽気で高い声が聞こえてくる。


友達と飲みに行っとったAが帰ってきたようだ。









「おかえり。…飲みすぎたんとちゃうか？加減せえ言うたやろ」


『飲みすぎてないもん』









えへへ、と声を漏らし俺の肩に顔を押し付けるA。


何度か見たことのある完全に酔っ払った姿。彼女はどうも酒に弱いらしい。









「…はあ、よう歩いて帰って来れたな。ほれ 行くで」


『んー』









ふらふらと歩く彼女を支えながらリビングへ。


ソファーに座らせ水を持ってくると、受け取ったAはごくごくとそれを飲む。


一気に飲んだら危ないで、と注意しようとした俺を 彼女の据わった目が制した。









『しんすけくん、』


「なんや」


『ちゅー、して』


「…は？」









ああ、よう聞くわ。酔った女に変な気起こす男の話。


酒飲んだくらいで そんな変わることないやろって。


思っとったし 思いたいけども。









「あかん」


『あかんくない』


「あかんて」


『なんでよ』









『…もっと、いちゃいちゃしたい。信介くんと』









火照った頬と熱っぽい目が なんや俺の知っとるAやないみたいで。


今まで抑えとったもんが全部溢れ出てしまいそうで。


珍しく、止められそうにもなくて。




ずるいやんか、酔った女襲うとか。









「まだ、お預けな」


『む、』









今すぐにでも口付けたいその唇に、ふに と親指を押し付けて。


不服そうな顔をした彼女を撫でて その場を去る。









「…ほんまに、どうかしとるわ 俺」









どくどくと早まる心臓を押さえる。




酒が入ったらよう本音が出るとか、言うけど。


もしそうやったとしたら。


あれも本音なのだとしたら。









すまんな、A。









「次からは抑えられる気がせんわ…」









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＊ ……。→←＊ 徹夜。

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