【北信介】５日間の料理教室。

＊ あと５日。 ページ3

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２日目の夜。今日はだし巻き玉子を教えようと思う。


これはうちで出す全ての定食についてくる、味噌汁の次によく作る料理。


初心者にはなかなか作るのが難しいと思うけれど 早いうちに教えれば次から練習できるだろう、と。









ボウルに卵を割り入れて溶きほぐし、味噌汁の際に使う出汁、薄口醤油と塩を少し入れる。


フライパンにサラダ油を薄く塗って卵液を4分の1流し入れ、少し固まったら卵を折り返して巻いていく。









『北くん、やってみよっか』


「はい」









再び卵液を流し入れたフライパンと菜箸を彼に手渡して、半熟状になったら菜箸で少しずつめくるように指示する。


でもなかなか上手くいかず。









『ごめん、ちょっと触るね』


「っ、」









ふるふると震える菜箸を後ろから支えてあげて、卵を折り返していく。


その間少しだけ、北くんの肩が強ばって。









『あ、嫌だったよね。ごめんね』


「あ、いや、」









「嫌、じゃなかったから…大丈夫、です」









最近抜けつつあった北くんの兵庫の方弁。


必死に標準語を喋っているけれど イントネーションがちょっぴり訛っている。


普段隙の無い北くんが 動揺しているのが見て取れた。


なんだか心臓の辺りがぎゅっとしたのを感じ、『焦げちゃう前に次の卵液入れよ』と話題を戻した。









なんやかんやで完成しただし巻き玉子。


今日はごはんと残っていた味噌汁、店の冷蔵庫から定食で出す漬物を少し貰って、昨日よりも少し豪華な夕飯。









「『いただきます』」









少しだけ焦げ目のついただし巻き玉子。


これはこれで香ばしくて美味しいかも、と声を漏らしたわたしに、北くんは「…そうですか？」と少しだけ拗ねたように顔を歪めた。









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