* あと6日。 ページ2
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さて、初日の今日は 簡単に味噌汁を。
鍋に水を張ってコンロに置きながら、隣に立つ北くんをちらりと見る。
見慣れた店の名前が入った紺色のエプロン姿。
これが見られるのもあと6日なのか、と寂しく思いつつ、水でふやかしておいた昆布を鍋に入れる。
『普段食べるなら顆粒だしとかでもいいと思うんだけど。…食べてもらいたいのって、特別な人…なんだよね?』
「…そう、です」
北くんは伏し目がちにこくりと頷く。
20歳とはいえ、わたしよりも2つ年下の彼の横顔は まだ少しだけ幼さが残っていた。
『じゃあとびきり美味しいのにしなくちゃね』
鍋を弱火にかけ、10分ほどかけて昆布を煮出していく。
その間に、冷蔵庫から余った大根と油揚げを取り出し、北くんに大根の皮を剥くよう指示した。
「…かたい」
『ふふ、思ったより力いるよね』
「剥いたあと、細切りにするんですよね」
『うんそう、さすが北くん』
「…それがこの店の味噌汁やって、よく知ってますから」
皮を剥いた大根を細切りにする。慣れない様子の北くんが切った大根と、わたしが切った大根は 2倍くらい細さが違った。
続けて油揚げも縦に半分に切ってから細切りに。
その間に出汁がとれていた昆布を鍋から取り出し、強火に切りかえて 沸騰させた後、火を止めて鰹節を入れる。
それから中火にかけ、再度沸騰したら 味噌汁の出汁の完成。
具材の大根と油揚げを入れて、火が通ったら味噌を溶かし入れる。
「…味噌汁一杯でも、こんなに手間がかかるんですね」
出来上がった味噌汁を眺めて、北くんが小さく呟いた。
『結構時間かかるでしょ?』
「どおりで、いつも美味いわけや」
北くんがお椀に味噌汁を注ぐ。
その横でわたしが余っていたご飯で具のない白おにぎりを握って、その日の夕飯、北くんにとってはまかないの完成だ。
「『いただきます』」
店の一角に、わたしと北くん。
向かい合って 手を合わせる。
最近はお店の合間に調理師免許を取る勉強をしていて、ゆっくりご飯を食べる時間がなかった。
初めて北くんと食べた夕飯は、久しぶりにとても美味しいと感じた。
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無気力なおバカ - 北ッサ、可愛い,,,。北さんより年上のお話はあまり見かけないので凄く新鮮です! (2021年2月7日 0時) (レス) id: a9db31a77a (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ひかりさん» コメントありがとうございます…!3年生組の年下設定が大好きなので 書いていて楽しかったです。次回作も覗いてみて頂けると嬉しいです! (2019年12月21日 0時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ひかり - 「北くんと」の方読みました!この作品の年下の北くんは、珍しくていいなぁっと思いました。これからも応援してます!頑張ってください! (2019年12月20日 21時) (レス) id: 1b9ecd7dcf (このIDを非表示/違反報告)
月埜(プロフ) - ティラミルクさん» いつもありがとうございます...!年下の北くん絶対かわいいなと思って書きました...今作も最後まで見届けて頂けると嬉しいです! (2019年12月14日 23時) (レス) id: d1ca7a883a (このIDを非表示/違反報告)
ティラミルク(プロフ) - 毎度つきまとうようにコメントしてしまってごめんなさい(笑)以前から楽しみに見させていただいていたのですが、前作ですっかりファンになってしまいました!この作品は年下北さんが新鮮で可愛いです(*^^*)更新楽しみにしてますね! (2019年12月14日 21時) (レス) id: edef360b1e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月埜 | 作成日時:2019年12月14日 20時